問われる原子力発電の経済性、米国の電力会社が1基を閉鎖へ電力供給サービス

電力を安く供給できると言われている原子力発電だが、米国の大手電力会社が経済性を理由に1基の運転を2013年に閉鎖すると発表して話題を呼んでいる。米国内で天然ガスの価格が下がってきたことが主な要因とみられており、改めて原子力発電の経済性が問われている。

» 2012年10月24日 19時09分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 キウォーニー(Kewaunee)原子力発電所

 原子力発電所の閉鎖を発表したのは大手電力会社のドミニオン(Dominion)で、ウィスコンシン州にあるキウォーニー発電所(図1)の運転を2013年の第2四半期に停止して、その後に閉鎖する予定だ。発電規模は556MW(メガワット)で、日本の原子力発電所(1基あたり700〜1200MW程度)と比べると規模は小さめである。

 発表文の中でドミニオンの最高経営責任者であるトーマス・ファレル氏は「純粋に経済性の観点で決めたことだ。(キウォーニー発電所が立地する)米国中西部で原子力発電の規模を拡大する計画が経済性の点で困難になった」と説明している。中西部における電気料金の低下を理由のひとつに挙げている。

 キウォーニー発電所は五大湖のひとつであるミシガン湖の沿岸に1974年に建設された。2011年にはNRC(米国原子力規制委員会)から2033年までの運転許可を取得していた。建設から60年間の運転が見込まれていたが、実際には40年で閉鎖することになる。閉鎖関連の費用として2億8100万ドル(約224億円)の計上を予定している。

 ドミニオンは現時点でキウォーニーを含めて4か所の原子力発電所を運営しており、残りの3か所はすべて米国の東部にある。この3か所の原子力発電所の今後に関して発表文では一切触れていない。ただファレル氏は「キウォーニーの問題は固有の事情によるもので、原子力産業全体を反映しているわけではない。今後も国のエネルギー需要を満たすために原子力発電の拡大が欠かせない」と強調している。

 米国では天然ガスの価格が下がっており、原子力発電の経済優位性が薄れてきたとも言われている。今回の閉鎖の理由である経済性、つまりコストに対する収益率の詳細は明らかにされていないが、原子力発電が天然ガスによる火力発電と比べて収益性の点で劣ってきた可能性も考えられる。

 ドミニオンは103年前の1909年に米国で発電事業を開始した歴史の長い電力会社で、東部を中心に2万7400MWの発電設備を保有し、15州で電力を供給している。天然ガスによる火力発電を主力にしているが、近年は原子力発電所を増やしてきた。キウォーニー発電所も2005年に買収した経緯がある。

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