電力市場のルールを決める「電気事業法」ウインターセミナー/電気の法律(1)

年末年始は普段と違うことを学ぶのに最適な時期。ということで、節電・蓄電・発電に取り組むスマートジャパンの読者が知っておくべき電気関連の主な法律のポイントをまとめてみた。第1回は電力の事業者と利用者の双方にとって最も重要な「電気事業法」を取り上げる。

» 2012年12月25日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電気事業法を調べてみて最初に驚くのは、この法律のオリジナルが明治44年(1911年)に制定されたという事実だ。すでに100年を超える歴史がある。当初の法律の目的は電気事業を飛躍的に発展させることにあった。ところが戦後に現在の9電力会社(沖縄電力を除く)に再編されてから、電気事業は地域単位の公益事業としての役割を強めていく。

 そこで昭和39年(1964年)に電気事業法が改めて制定される。新しい電気事業法では、地域ごとに発電から送電・配電までを一貫して提供する電力会社に対して規制する内容が中心になった。電力の供給計画や設備の設置計画などを国に提出すること、さらには利用者を保護するために電圧や周波数を維持することなどを義務付けた。現在の電気事業法は、この昭和39年に制定されたものがベースになっている。

小売の自由化で「新電力」が生まれる

 その後、電気事業法には大きな改正が何度か加えられた。最大の目的は電力会社が独占している電気事業の自由化を進めることである。

 まず1995年(平成7年)に発電と小売が部分的に自由化された。発電に関しては、電力会社に電力を供給できる卸事業の規制が撤廃され、それまでの「卸電気事業者」に加えて「卸供給事業者」が認められた。特定の地域に限定して電力を小売できる「特定電気事業者」の制度も始まった。

図1 電気事業者の分類と事業内容

 2000年に入ると小売の自由化が大きく進む。電力会社との契約電力が最も大きい「特別高圧」の利用者に対して、電力会社以外の事業者が電力を販売できるようになった。その役割を担うのが「特定規模電気事業者」で、最近では「新電力」という別名で呼ばれている(図1)。

 続いて2004年には「高圧大口」、翌2005年に「高圧小口」まで小売の自由化が広がっていく。しかし家庭や店舗など「低圧」の利用者に対しては、現在でも電力を販売できるのは電力会社だけだ(図2)。これも電気事業法によって決められていることである。

図2 電力契約の種類と自由化の状況

「発送電分離」も電気事業法の対象

 電気事業法によって段階的に自由化が進められた結果、日本の電力市場には役割の異なる6種類の事業者が混在する複雑な構造ができてしまった(図3)。その中で「一般電気事業者」と呼ばれる従来からの電力会社は発電と小売のほかに、電力の流通を担う送配電ネットワークを地域単位で独占的に運用し続けている。

図3 日本の電力市場の構造。出典:資源エネルギー庁

 今後の焦点は、この送配電ネットワークの開放である。最近は「発送電分離」なる言葉を耳にすることが多いが、具体的には電力会社の発電・送配電・小売の3つの機能を分けることを意味する。送配電ネットワークを独立の事業体が運営することで、発電と小売の自由化を促進するのが狙いだ。

 すでに発送電分離の具体案が政府内で検討されており、一部の措置は2013年度に電気事業法を改正して実施する見通しである。こうして電力の自由化の進展とともに、ますます電気事業法は肥大化していく。

 このほかにも電気事業法では発電設備に関する規則などを細かく定めている。全体で138条まであり、さらには制度の変更に伴って膨大な数の附則と別表が追加されている。発送電分離を含む新しい構造の電力市場に合わせて、その根幹になる電気事業法も整理・再編する必要が出てくるかもしれない。

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