エネルギー使用量の管理・報告を徹底する「省エネ法」ウインターセミナー/電気の法律(3)

いま電力危機によって節電が求められているのと同様に、1970年代の石油危機をきっかけに「省エネ」が国の最重要課題になった。燃料と熱、さらには電気を効率的に使うことを目指して作られたのが「省エネ法」である。この法律には電気機器のエネルギー消費効率に関する基準も含まれている。

» 2012年12月27日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「省エネ法」が制定されたのは昭和54年(1979年)で、まさに第1次と第2次の石油ショックが起こった中間の時期だ。その後も何度か法律の内容が見直されて、最近では2010年4月に大きな改正が実施された。現在の「改正省エネ法」と呼ばれるものは2010年版を指している。

 改正が繰り返された背景には、国全体のエネルギー消費量が長年にわたって増え続けてきたことがある(図1)。省エネ法の正式な名称は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」で、目的は単純明快だ。企業や家庭におけるエネルギーの使用量を抑制することにある。

図1 日本の最終エネルギー消費量と実質GDP。出典:資源エネルギー庁

 省エネ法が対象にするエネルギーは燃料・熱・電気の3つで、再生可能エネルギーや廃棄物から作り出すエネルギーは含まれない。このうち熱と電気は1つ目の燃料から作られたものだけが対象になる。結果として石油・ガス・石炭といった化石燃料の使用量を制限することが省エネ法の目的になる。

2010年の改正で対象企業が広がる

 省エネ法ではエネルギーの使用場所を3つに分類している。エネルギーの使用量が最も多い工場を中心とした「産業部門」のほか、家庭やオフィスなどの「民生部門」、自動車をはじめとする「運輸部門」である。

 いずれのエネルギー使用量に対しても企業が責任を負う、というのが省エネ法の考え方だ。民生部門の場合は各家庭ではなくて、住宅やビルの建築主と管理者の責任になる。さらにエネルギーを消費する機器のメーカーや輸入販売事業者に対する規制も盛り込まれている。

 対象になる企業のうち、年間のエネルギー使用量が一定の基準を超えると、省エネ法による報告と対策の実施が義務付けられる。特に2010年の改正によって、エネルギー管理の基準が大幅に厳しくなった。

 従来は工場や事業所単位のエネルギー使用量が基準を超えている場合だけ規制の対象になっていた。2010年4月からは各企業における全事業所のエネルギー使用量を合計して基準を超えていると、企業全体のエネルギー使用量を報告して対策を講じなくてはならない形に変わった(図2)。

図2 「改正省エネ法」(2010年施行)で規制の対象になる事業者。出典:資源エネルギー庁

 その基準とは、年間のエネルギー使用量が原油に換算して1500キロリットルを超えるかどうかである。一般のオフィスで電力だけを使う場合であれば、約600万kWhの電力使用量に相当する。電力会社との契約が「特別高圧」(契約電力2000kW以上)や「高圧大口」(500kW以上)の企業は、大半が規制の対象になると考えられる。

ビルのテナントでも管理対象に

 規制の対象になった企業に求められることは主に2つある。第1に企業全体のエネルギー使用量を把握して、次年度の5月末までに「エネルギー使用状況届出書」を提出する必要がある。第2に年平均1%以上のエネルギー使用量を削減するための「中長期計画書」と「定期報告書」を、毎年度の7月末までに提出することが義務付けられる。

 こうした管理・報告を実施するために、企業内にエネルギー管理体制を設けて責任者や担当者を国に届け出なくてはならない(図3)。その中には国家資格の「エネルギー管理士」を有する専門家を少なくとも1名以上含める必要がある。

図3 企業に求められるエネルギー管理体制。出典:資源エネルギー庁

 ビルを借りるテナントの場合でも省エネ法の対象に入る。テナントみずからが設置した機器のエネルギー使用量のほかに、ビル全体の空調なども各テナントが専用に使っている分を加えて報告する必要がある(図4)。数多くのビルを利用する企業にとっては報告の手間だけでも相当な負担になる。

図4 ビル全体のエネルギー設備と使用量の報告範囲。出典:資源エネルギー庁

 それでも個々の企業がエネルギー使用量を削減するには限界がある。省エネ法ではエネルギーを消費する機器のメーカーに対しても規制が設けられている。1999年に実施した改正で「トップランナー基準」と呼ぶ新しい指標が組み込まれた。

 特に利用者が多い電気・ガス機器のほか、事務機器や自動車に対してトップランナー基準が決められている。機器ごとにエネルギー消費効率を測定するための指標を用意して、何年度までにどのくらいの数値まで引き下げるかを目標として設定する(図5)。

 この目標を満たした機器は「省エネラベル」を貼って販売することができる。エネルギー使用量を削減するための対策として省エネラベルの付いた機器を導入することが有効とみなされるわけだ。

図5 「トップランナー基準」(2010年3月版)の対象になる電気・ガス機器。それぞれにエネルギー消費効率の指標と目標年度を設定。出典:資源エネルギー庁

 以上のように国のエネルギー使用量を左右する企業と機器を対象にして、数値による改善策の徹底を求める点が省エネ法の根幹である。その成果は1990年代後半から顕著に表れており、国全体のエネルギー使用量はほぼ横ばい状態で推移している。

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