大規模ビル6棟のBEMSが連携、最大22%の電力ピークを削減スマートシティ

これから夏の節電対策の準備が本格化する。重要なのは昼間に増大する電力需要のピークカットだ。横浜市は冬の夕方に6棟の大規模ビルを対象にしたピークカットの実証実験で最大22%の電力需要を削減した。同様の実験を夏の昼間にも実施して効果を検証する。

» 2013年03月29日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 横浜市の実証実験は日本で初めて複数のビルが連携してピークカットの効果を測定したもので、極めて実用性の高い注目すべき取り組みである。市内に分散する6棟の大規模なビルに設置したBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を統合的に管理して、電力需要がピークになる時間帯に各ビルの電力使用量を削減できるようにした(図1)。

 6棟のビルを連携したピークカットの流れはこうなる。横浜市が広域の電力需給状況を管理するためのCEMS(地域向けエネルギー管理システム)から6棟のビルを統合管理するBEMSに対して節電依頼を発行する。いわゆる「デマンドレスポンス」で、この依頼に応じて各ビルが電力使用量を削減する。

図1 デマンドレスポンス(DR)による電力ピークカットのプロセス。出典:横浜市温暖化対策統括本部

最高気温が8度以下の7日間に実施

 今回の実証実験では、6棟のビルの電力使用状況をもとに「統合BEMS」が各ビルの電力削減量を最適配分する点に特色がある。デマンドレスポンスの対象になる17時〜20時の3時間のうち、1時間単位で各ビルの削減量を決めて、個々のBEMSに指示を出して節電対策を実施する仕組みだ(図2)。

図2 各ビルの状況に合わせた電力削減量の配分。出典:横浜市温暖化対策統括本部

 この方法で1月の平日7日間の夕方にピークカットの実証実験を試みた。前日夜の時点の予報で最高気温が8度以下になる日を選び、電力需要が増大する17時〜20時にデマンドレスポンスを発行して電力の削減量を測定した。

 その結果、6棟のビルが使用した1時間あたりの電力量が過去30日間の実績値と比べて最大で22%も削減できた(図3)。削減率が最も小さかった日で13.4%、7日間の平均で17.0%という高いピークカットの効果を発揮した。

図3 ピーク時間帯(17時〜20時)における1時間あたりの電力削減状況(6棟の合計値)。出典:横浜市温暖化対策統括本部

 実際に1月の東京電力管内の電力需要を見てみると、この7日間は需給率が90%前後と高めで、特に1月17日(木)は18時〜19時に94%まで上昇している(図4)。まさに22%のピークカットを実現した日である。

図4 東京電力の1月の最大需要と供給力(実:最大電力実績、供:ピーク時供給力、単位:万kW)。出典:東京電力

今年の夏は昼間のピークカットを検証

 冬の電力使用量は一般的に朝の10時くらいまで増え続けた後、ほぼ一定の状態を維持して、夕方の17時から再び上昇してピークに達する。ピークを過ぎるのは20時くらいである(図5)。17時〜20時にピークカットできると、地域全体の電力需要の増大を抑制する効果がある。

図5 時間帯ごとの電力使用量とピークカットの状況。出典:横浜市温暖化対策統括本部

 横浜市は同様の仕組みを使って夏のピークカットの効果も検証することにしている。夏は昼間の13時〜16時が電力需要のピークになる。冬と同様にデマンドレスポンスによって15%以上のピークカットを実現できるかが注目される。

 この実証実験は横浜市が2010年度から開始した「横浜スマートシティプロジェクト」の一環で進めている(図6)。BEMSの実証実験には東芝をはじめ7社が参加して、大規模なオフィスビルや商業施設を対象にエネルギーの最適な利用方法を検証中だ。

図6 「横浜スマートシティプロジェクト」の全体像とBEMSによる実証実験の範囲。出典:横浜市温暖化対策統括本部

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