蓄電池は置くだけでは稼がない。充放電のタイミングを市場に合わせて最適化し、収益を上げていくためには、高度なEMSとアグリゲーターの存在が不可欠だ。「スマートエネルギーWEEK 2026」のブースから、制御・運用を担う注目企業の動向を報告する。
2026年春、東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek」には、系統用蓄電池から産業用・家庭用に至るまで、多種多様な蓄電池関連製品・サービスが展示された。蓄電池関連ブースは過去最多を数え、メーカー各社より最新の蓄電池が発表された他、「蓄電池をどう動かすか」というソフト面の進化をアピールするブースも目立った。
蓄電池は充電し、放電する。その操作自体はシンプルだ。しかし、電力市場において最大の収益を得ようとすれば、話はまったく異なる。需給調整市場、卸電力市場、容量市場──複数の市場を横断しながら、価格変動を読み、最適なタイミングで充放電を行わなければならない。この複雑な運用を担うのがアグリゲーターであり、現場での充放電制御を実現するのがEMS(エネルギーマネジメントシステム)だ。
蓄電池というハードを用意するだけでは、蓄電池ビジネスを成功に導くことはできない。優れたEMSと信頼できるアグリゲーターがなくては、蓄電池の価値は半減する。それを裏付けるかのように、今回の展示会には、EMS・アグリゲーション分野で存在感を発揮する企業が多数出展した。本稿では、会場で取材した注目6社の取り組みを紹介する。
ドイツに本社を置くメテオコントロールは、世界140カ国以上・7万件超の太陽光発電所に遠隔監視・制御システムを導入してきたグローバルカンパニーだ。日本法人のメテオコントロールジャパンが強調するのは、「制御技術の専門家」としての立ち位置だ。同社が提供するのは、アグリゲーターのアグリゲーションシステムと蓄電池本体をつなぐ「ローカルEMS」であり、指令を物理的な充放電として確実に完結させるための基盤となる。
この制御基盤の真価が問われるのが、需給調整市場における一次調整力だ。系統周波数の変動に対し2秒以内に応動し、かつ指令通りの電力を正確に逆潮流させなければならない。同社の独自技術である「フィードバック制御」は、電力メーターの実測値を常時監視し、電力変換時のロスによるわずかな不足分をリアルタイムで補正する。これにより、指令値と実測値の乖離(かいり)を防ぎ、市場での「失格」リスクを徹底的に排除している。
中核製品である「ハイブリッドEMSブルーログ(blueLog)」は、その高い制御精度が評価され、国内でも200MWhクラスの大型案件を含む受注が急増している。2026年6月末には、基本スペックを大幅に向上させ、国内のサイバーセキュリティ基準であるJC-STARに対応した新機種をリリース予定。日本の制度改変に迅速に適合する柔軟性が、同社の存在感をさらに高めている。
1990年創業の国内老舗EMSメーカー、ラプラス・システムは、太陽光発電の遠隔監視システム「ソーラーリンクゼロ(Solar Link ZERO)」で業界トップクラスのシェアを誇る。太陽光モニタリングの実績は9万5000件超に達し、国内流通している主要パワーコンディショナーのほぼすべてに対応している。
今回のブースでは、「蓄電池EMS」を前面に打ち出した。既存のハードウェア(ソーラーリンクゼロ)に蓄電池用ソフトウェアを組み込む形で提供されるローカルEMSで、アグリゲーターのサーバーから受け取った指令に従って蓄電池の充放電を制御する。需給調整市場に関しては、三次調整力・二次調整力に加え、2026年秋頃には一次調整力への対応も見込む。
同社が展示会で特に強調したのが、JC-STAR(サイバーセキュリティ評価・ラベリング制度)への対応状況だ。2025年11月には、ソーラーリンクゼロ(T4・T5の2機種)がレベル1を取得している。2027年4月以降、系統連携する太陽光・蓄電システムにはJC-STAR未認証機器は認められない見通しとなっており、すでに認証を取得している同社製品は心強い。
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