東芝は、系統用蓄電池のEPCから市場運用までをトータルに提供する。今回のブースでは「最適制御で収益最大化」をメインテーマに掲げ、ハードとソフト両面からのアプローチを披露した。
ハード面での最大の武器は、同社独自のリチウムイオン電池「SCiB」である。一般的な電池に比べ、高出力かつ極めて長寿命な特性を持つSCiBは、頻繁な充放電が求められる需給調整市場において圧倒的な強みを発揮する。この物理的な強靭さを支えるのが、同社が誇る2つのAI技術だ。気象データから発電量を読み解く「発電量予測AI」と、複数の市場価格を分析して最適な入札計画を弾き出す「取引戦略AI」が、蓄電池の価値を引き出している。
同社の戦略で興味深いのは、AIの演算に「人間のオペレーター」の判断を介在させている点だ。急激な市場変動や予期せぬ系統トラブルに対し、過去の膨大な実績を持つプロの知見を重ねることで、AI単体ではリスクの残る局面でも確実な運用を可能にしている。
E-Flowは、関西電力の100%子会社として2023年4月に設立されたアグリゲーターだ。関西電力グループが2018年から積み上げてきたVPP実証事業の成果と市場取引のノウハウを引き継ぎ、現在は全国250地点以上のエネルギーリソースを管理・運用している。2030年度には売上高300億円、運用設備容量1GWを目標に掲げている。
事業の基盤となるのが、独自の分散型プラットフォーム「K-VIPs+(ケービップスプラス)」だ。電力市場のあらゆるデータを学習したAIを搭載しており、卸電力市場・需給調整市場・容量市場での最適な入札計画を自動生成する。一方で、AIだけでは予測できない急激な市場変動には、経験豊富なオペレーターが対応する。
JC-STAR対応については、現場側のゲートウェイ・ルーター等の通信機器はJC-STAR適合品を選定して採用しており、未対応の現場には切り替えを働きかけている。「今後の新規案件は常にセキュリティ確認が前提になる」という姿勢だ。関西電力グループとしての電力市場への深い知見と、幅広い機器への対応力が競争優位の源泉となっている。
6社の取り組みを通じて見えてきたのは、蓄電池ビジネスが「ハードの時代」から「運用・制御の時代」に移行しつつあるということだ。需給調整市場の上限価格は2026年3月に19円から15円へと引き下げられるなど、市場環境は日々変化している。市場収益に頼り切ったビジネスモデルは通用しにくくなり、複数市場の組み合わせや、FIP制度を活用したプレミアム収益との複合モデルへの転換が求められている。
ローカルEMSベンダーとしてはラプラス・システムとメテオコントロールが存在感を示し、アグリゲーターとしては東芝エネルギーシステムズとE-Flowが市場での実績を積み上げている。ユーラスエナジーは発電事業者でありながらVPP基盤を内製し、オムロンフィールドエンジニアリングは自家消費EMSから分散制御・VPPへと制御の対象を広げている。業態が異なれば蓄電池への関わり方も異なるが、「いかに賢く蓄電池を動かすか」という問いに向き合っている点は共通している。
また、今回の取材を通じて、JC-STAR対応が業界全体の最大の関心事の一つであることが改めて浮き彫りになった。2027年4月以降の系統連携案件への導入要件として実質的に必須化される見通しであり、国内メーカーが優位性を発揮しやすい分野として注目されている。一方で、対応機器への絞り込みによる調達コスト上昇を懸念する声も複数の担当者から聞かれた。普及と安全性のバランスをどう設計するかは、業界全体が答えを出すべき課題として残っている。蓄電池がエネルギーシステムの中核を担う時代に向けて、運用の巧拙が事業の成否を左右する局面はこれからさらに鮮明になっていくだろう。
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