もう需要ピークは起こさない、会津若松で始まるデマンドレスポンススマートシティ

富士通と東北電力、会津若松市が始めたスマートシティの取り組みは、再生可能エネルギーと系統電力を組み合わせ、デマンドレスポンスで取り持つ。デマンドレスポンスの目的はピークカットやピークシフトを自動化すること。電力危機を避ける取り組みである。

» 2013年05月08日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 福島県の会津若松市を対象とした都市のスマート化事業が始まる。都市のスマート化にはさまざまな目的がある。会津若松市の場合は、再生可能エネルギーによる発電と、電力需要、系統電力のバランスを取る仕組み作りが目的だ。再生可能エネルギーをいかに既存の系統電力にうまく組み込むか、災害に耐える仕組みはどのようなものかを実証していく。雇用の増大も狙う。

 富士通と東北電力、会津若松市の3者が共同で2013年4月から、2016年3月までの3年間、「会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業」*1)に取り組む。

*1) 2013年4月に経済産業省がスマートコミュニティ導入促進事業の補助金交付を決定したことで、事業化に着手した。この補助金は岩手県、宮城県、福島県を対象としている。

図1 スマートコミュニティの概要。出典:富士通

 富士通は、事業全体のマネジメントの他、エネルギーコントロールセンター(ECC)の構築に取り組む。ECCには大きく2つの機能を持たせる。まずは再生可能エネルギーによる発電の可視化だ。これが発電量予測につながる。次に低圧を利用する契約需要家向けデマンドレスポンスサービスの提供だ。

 東北電力は富士通と共同でデマンドレスポンスサービスを開発する。同社としても初の試みだという*2)

*2) 東北電力が参加しているスマートコミュニティ事業は今回のもの以外に2つある。東芝と石巻市による「石巻スマートコミュニティ導入促進事業」が1つ。もう1つは大衡村とトヨタ自動車、トヨタ自動車東日本による「第二仙台北部中核工業団地『F-グリッド』を核としたスマートコミュニティ計画」だ。

 会津若松市には約4万8000世帯がある。「ECCではデマンドレスポンスを含め、1000件のサービスを募集する予定だ。寒冷地であること、積雪があることを考慮に入れ、世帯構成や在宅比率を反映したサービスにしたい」(東北電力)。「1年半後にはデマンドレスポンスの試行を開始する予定だ。当初は会津若松市を中心とした地域で取り組むものの、福島県全域までサービスを拡大することを目指す」(富士通)。

 デマンドレスポンスとは、需要家(消費者)が電力の需要量(消費量)を適宜変動させて需給バランスを保つ仕組み。通常の電力サービスでは需要に併せて供給側(発電所の出力)を変動させることで需給バランスを保つが、この方式だと、ピーク需要に合わせて発電設備の余裕を大きく取らなければならない。デマンドレスポンスがうまく機能すれば、需要家側が短時間のうちに消費量を引き下げるため、ピークカットやピークシフトに協力でき、供給側の負荷が軽くなる。再生可能エネルギーの出力予測と組み合わせて、引き下げるべき消費電力量をECCが割り出し、需要家に提供していく形だ。

 デマンドレスポンスへの協力を依頼するためのインセンティブとしては、地域で利用できるポイントやクーポンなどを想定している。

雪国型メガソーラーとは

 ECCは雪国型メガソーラーと接続する。「雪国型メガソーラーの目的は、売電益によってECCの運用コストをまかなうことだ」(会津若松市)。

 なぜ、雪国型と呼ばれるのだろうか。会津若松市は法律に基づいた豪雪地帯に指定されている。太平洋岸や瀬戸内海に見られるような一般的なメガソーラーでは対応できないと考えられる。太陽電池モジュールの設置角度を深くすることはもちろん、地上に設置するのではなく、駐車場の駐車スペースの上部を覆うように取り付ける*3)

*3) 富士電機子会社の富士グリーンパワーが、富士通セミコンダクターの会津若松工場の駐車場に設置する予定だ。この駐車場には屋根が備わっておらず、太陽電池が中空に浮くような設置方式になる。

 会津若松市はECC以外の事業を担当する。具体的には災害時電源の確保と、バイオマスに関する取り組みだ。例えば福島県の地域グリーンニューディール基金を用いた家庭用太陽光発電システムの普及促進や、新規に導入する電気自動車5台を利用した移動型蓄電池システムの構築だ。バイオマス発電については、利用を拡大することで協力する。2012年7月に市内で発電を開始したグリーン発電会津(バイオマス発電、5000kWh)の電力を市の公共施設で使う*4)。エネルギーの地産地消のモデルになるという。

*4) 今回の会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業では、バイオマス資源などを活用した再生可能エネルギーを地域へ供給するモデルの構築もうたっている。商業施設、農業施設に温水や冷水を供給するというものだ。ただし、比較的大規模な計画となるため、民間の熱供給事業者が参加を表明するまでは事業化計画を保留している。

【訂正】記事の掲載当初、不正確な表現がございました。お詫びして訂正します。上記記事は既に訂正済みです。第5段落にあった「そのうち、1000世帯をめどにデマンドレスポンスサービスを募集する予定だ」という東北電力の発言の部分と「2年半後」という富士通の発言です。正確にはECCが対応するサービスの件数が1000件あり、そのサービスがデマンドレスポンスを含んでいます。デマンドレスポンスサービスの開始時期は平成26年度下期を予定しており、1年半後です。

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