放牧地に東北で最大18MWのメガソーラー、放射能汚染を乗り越えて生物と共生へスマートシティ

岩手県南部の太平洋に面した大船渡市を中心に、再生可能エネルギーによる電力自給を目指すプロジェクトが進んでいる。第1弾として放射能汚染の被害を受けた放牧地に東北で最大のメガソーラーを建設することが決まった。将来は牧草地にして生物と共生できる発電所を目指す。

» 2013年05月10日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東日本大震災の被災地である大船渡市を中心に「気仙広域環境未来都市」を構築するプロジェクトがある。再生可能エネルギーを活用した分散型の電力自給体制を強化するため、地域内で早期に40〜50MW(メガワット)の太陽光発電の実現を目指している。

 その第1弾として広さ65万平方メートルの放牧地の一部を利用して、18MWの大規模なメガソーラーを建設する。場所は大船渡市の北部にある「五葉山(ごようざん)」に広がる放牧地で、一帯は花の名所としても知られている(図1)。

図1 「五葉山太陽光発電所」の建設予定地。出典:前田建設工業

 この放牧地は福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染のために、放牧を中止している。長期間をかけて除染が必要で、復興を兼ねて大規模なメガソーラーの建設地として利用することにした。除染が完了した後は放牧を再開できるように、「自然環境維持型」の発電所として設計する方針だ(図2)。

図2 「五葉山太陽光発電所」の完成イメージ。出典:前田建設工業

 2013年6月に工事を開始して、2015年3月から18MWの規模で稼働する予定である。東北では最大のメガソーラーになり、年間の発電量は2000万kWh程度になる見込み。標準家庭の電力使用量を年間4000kWhとすると5000世帯分に相当する。合わせて大型の蓄電池を設置することも検討していて、地域の電力自給体制を拡大していく。

 「気仙広域環境未来都市」の構想では、地域の電力使用量の30%を再生可能エネルギーで自給できることを目指す。今後は発電能力が1〜2MWクラスの小規模なメガソーラーを複数の候補地に建設するほか、公共施設にも太陽光発電システムと蓄電池を導入する計画である。

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