なぜ石油はいつまでも「あと40年」なのか?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年06月07日 17時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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正解:

 d. 石油消費量減

ミニ解説

 「石油があと40年でなくなる」と表現された場合、この年数を「可採年数」という。可採年数を導き出す式は次の通りだ。

  • 可採年数=埋蔵量/年生産量

 従って、埋蔵量や年生産量(年採掘量)が変われば可採年数は上下に変化する。イギリスの国際石油資本であるBPによれば、2011年時点の埋蔵量は、1兆6526億バレル。年生産量は305億バレルなので、可能採年数は54.2年だ。

 このうち年生産量は年間の消費量にほぼ比例する。石油の備蓄量はそれほど増減せず、消費量に応じて生産量が変わるからだ。石油生産量は国連のEnergy Statistics Yearbookによれば、1980年には全世界で29億7866万トン。これが2000年には13%増の33億6607万トンになっている。2009年でも35億6193万トンだ。つまり生産量はいっこうに減っていない。可採年数が減らない理由として、dのように石油消費量減を挙げることは誤っている。

 解答欄の選択肢a、bは可採年数の計算式のうち、埋蔵量に関係している。BPが2012年6月に発表した「BP Global - Statistical Review of World Energy 2012」によれば、例えば米国の石油生産量は2008年に底を打った後、2011年には2008年比で16%増加している。これは油母(ケロジェン)を含む頁岩「オイルシェール」から「石油」を抽出する技術が開発されたことが大きい。World Energy Councilが2007年に公開したレポート「2007 Survey of Energy Resources」によれば、オイルシェールの全世界の埋蔵量は、2兆8000億バレル。つまり現在の石油埋蔵量よりも多い。

 このように例えば中東で大規模な油田が発見される(a)というよりも、従来の技術ではコスト上、不可能だった油田の開発が進んだこと(b)が埋蔵量増加に役立っている。オイルシェールに限らず、これは深海や極地に眠る石油資源の開発などにも当てはまる。

 選択肢cはどうだろうか。石油価格は数年の範囲で見ると、上昇下降を繰り返しているが、10年以上のスパンでは一方的な上昇トレンドにある。これは経済産業省が発表した「エネルギー白書2012」などにも示されている通りだ。石油価格上昇はさきほどの計算式のうち、埋蔵量にも年生産量にも影響を及ぼす。なぜか。

 石油価格が上昇すればより高コストな生産技術が利用できるようになり、これまでは採掘できなかった油田が利用できるようになる。つまり埋蔵量が増える。石油価格が上昇すると、石油の消費量は減る、または頭打ちになる。すると、年生産量が増えなくなる。いずれも可採年数を増やす方向に働く。

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