集合住宅のデマンドレスポンスはこれから、パナソニックが社宅で実証実験エネルギー管理

電力の需給のひっ迫を防ぐため、オフィスビルを中心にデマンドレスポンスサービスが広がりつつある。次は集合住宅が効果的だと考えられている。パナソニックは社宅を利用して集合住宅向けのサービス開発に取り組む。

» 2013年06月14日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電力の供給が追い付かなくなりそうになった場合、需要側の電力量を引き下げることで危機を回避する仕組みが整備されつつある。ピーク需要カットを目的としたデマンドレスポンスだ。既にオフィスビルなどに向けたサービスが全国で始まっている。

 「社会的背景として、集合住宅に対してもデマンドレスポンスサービスが必要になり、広がっていくだろう。そのとき、居住者に対して、どのように消費電力量を下げてもらうのか、どのような手法がよいのかを調査する必要がある」(パナソニック エコソリューションズ社)。

 同社は、従業員の社宅を対象に2013年6月から約2年間をかけて、スマートマンション実証実験を進める。対象となるのは大阪府交野市とさいたま市の約100世帯(図1)。遠く離れた2カ所を選んだ理由は、関東と関西の地方の差を明らかにしたいからだという。

図1 実証実験の対象住宅。出典:パナソニック

 実証実験ではマンションの占有部と共有部でそれぞれ取り組みを進める。占有部では分電盤の消費電力を計測し、遠隔制御可能なエアコンを設置、利用する(図2)。計測と制御には同社が戸建て住宅向けに販売中のHEMS機器「AiSEG」を利用する。この他、電力情報を表示するために、タブレット端末を世帯ごとに導入する。

 戸建て住宅向けのAiSEGとは異なる取り組みも盛り込んだ。各種センサー情報の収集だ。温湿度センサーや照度センサー、赤外線を利用した人感センサーを配置する。消費電力や、部屋の温湿度と照度を居住者の行動と組み合わせたセンサーデータを同社のクラウドサーバに集積し、分析する。戸建て住宅とは異なり、集合住宅全体で最適化するノウハウ蓄積が目的だ。

 共有部では、照明やエレベータの消費電力を計測する他、今後、産業用の蓄電システムを導入する予定だ。

図2 実験の概要。出典:パナソニック

 スマートマンション実証実験では、実際にデマンドレスポンスサービスを開始したときに必要になるデータを集めることに力点が置かれている。電力会社から送られてくる翌日の需給ひっ迫情報を居住者側に通知する詳細な仕組みや、居住者側の協力を得やすくする動機付け(インセンティブ)については今後決めていく部分が多い。「当社だけではインセンティブの仕組みを作り上げることは難しいため、今後、他社と一緒になって取り組んでいく」(同社)。当初は消費電力情報とひっ迫情報をタブレット端末に表示することで省電力につながる行動を誘導することから始める。

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