電気料金を値上げしても、役員給与は減らさない電力会社法制度・規制

すでに東京・関西・九州の3電力会社が電気料金の値上げを実施、さらに東北・四国・北海道の3社が国の認可を待っている。各社は最大限のコスト削減に努めることを表明しているものの、それぞれの対応はまちまちだ。役員給与の削減率にも大きな違いが見える。

» 2013年06月20日 17時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 この1年ほどのあいだに、電力会社の経営トップが頭を下げる場面を何回見たことだろう。電気料金の値上げを申請する時には「利用者の皆様にご負担をおかけして申し訳ございません」と陳謝する。ところが値上げの認可を受けるまでの国との交渉過程を見ると、さまざまなコストを認めてもらうために躍起になる電力会社の姿が垣間見える。

 最近になって毎日新聞が報じた関西電力の「空き社宅」の問題は典型例だ。社員が住んでいない数多くの社宅の費用を値上げ申請時の案に盛り込んでいたところ、国の審査委員会の指摘によって大幅に減額せざるを得なくなったという。表向きには原子力発電所の運転停止によって火力発電の燃料費が増えたことを値上げの理由に掲げているが、まだ社内で削減できるコストが大量に潜んでいることは容易に想像がつく。

 例えば役員の給与がある。各電力会社は値上げの申請にあたって、経営効率化のひとつとして人件費の削減を決め、当然ながら役員給与の減額も実施することをうたっている。しかし実際の削減状況を見てみると、各社の対応には驚くほど大きな差がある。

図1 電力会社6社が値上げ申請時に報告した人件費と役員給与

 前回の料金改定時(2008年度)と比べて役員給与の削減率が最も大きいのは東京電力の100%である(図1)。東京電力は原子力損害賠償支援機構の傘下で国有化された状態にあり、経営責任を明確にするためにも妥当な措置だろう。北海道電力の50%削減にも厳しさが感じられる。

 問題は残る4社で、東北電力が25%、関西電力が20%、九州電力が13%で、四国電力にいたっては0%だ。四国電力は役員退職慰労金を廃止したことだけで済ませている。社員の給与を含む人件費全体を13%削減している中で、経営責任の示し方としては甘すぎると言わざるを得ない。

 いまや「総括原価方式」として広く知られるように、電力会社はコストを積み上げたうえで利益を上乗せして、電気料金の値上げを申請する。この方式を続ける限り、身を切るようなコスト削減を求めることは無理がある。早期に小売自由化と発送電分離を実施して、電力市場を開放するしか方法はない。

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