日本はいつなのか、米国で「リーフ」に向けたワイヤレス充電器の販売始まる電気自動車

電気自動車の「欠点」である電池を改良しようとする動きが活発だ。電池の性能や取り扱いを改善する以外にも、充電インフラや手法を改良することも効く。その1つがケーブルを使わないワイヤレス充電だ。米Evatran Groupは日産自動車の「リーフ」などに向けてワイヤレス充電システムを実用化、ボッシュと共同で米国での販売を開始した。

» 2013年06月21日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電気自動車向けのワイヤレス充電システムが、長い研究開発段階を抜けて、とうとう購入可能になった。

 米Evatran Groupと米Bosch Automotive Service Solutions(ボッシュ)は、2013年6月、ワイヤレス充電(無線充電)システムについて独占販売契約を結んだと発表した。ワシントン特別区でEDTA(Electric Drive Transportation Association)が開催した「2013 EDTA Conference & Annual Meeting」で明らかにした内容だ。

 Evatran Groupは「Plugless Power」という名称でワイヤレス充電システムの開発を2009年から続けており、今回、「Plugless L2 Electric Vehicle Charging System」(図1)として発売に至った。Evatran Groupによれば米国市場で初のワイヤレス充電システム製品である。価格は約3000米ドルだ。充電システムを単に販売するのではなく、ボッシュによる導入サービスと消費者向けのローンメニューも設けた。

図1 「Plugless L2 Electric Vehicle Charging System」の外観(最終版の製品とはわずかに異なる)。出典:Evatran Group

 ワイヤレス充電のメリットを最大限に生かすために、手動操作をなるべく減らすハンズフリー化を推し進めたことが特徴だ。システム導入後は、充電位置の上に駐車するだけで、自動的に充電が始まる。ワイヤレス充電時には、北米でケーブル型の充電器が使っているのと同じ、SAE J1772プロトコルで双方向の通信が始まり、充電開始に至る。車外に出てケーブルの抜き差しやボタンの操作をする必要はない。

 満充電になったり、車を発進させたりすると、充電が自動的に停止する。自動車側には3.3kWの電力が送られるため、充電に要する時間はケーブル型の普通充電器と同じだという。

どのように利用できるのか

 同システムは3つの主要部品からなる(図2)。緑色の波のような記号が描かれている部分、車と地上部間の送電には電磁誘導技術を用いており、効率は91.7%だ。図2で「B」とある車載モジュールや「C」とある充電コネクタはもともと電気自動車に備わっている部品だ。

図2 Plugless L2 Electric Vehicle Charging Systemのシステム構成。出典:Evatran Group

 3つの主要部品のうちの第1が、内部に受信コイルが格納された「車載アダプター」だ(図3)。重量は4kg程度であり、図2の「A」のように車体下部に取り付けて使う。新車であれば、購入時オプションとして取り付け可能だ。既に利用している車には全米で1300以上の拠点を持つBosch Car Serviceが取り付ける。

 2013年6月時点では日産自動車の電気自動車「リーフ」と米General Motorsのプラグインハイブリッド車「Chevrolet Volt(シボレー・ボルト)」用がある。2015年、全世界向けに出荷を開始する新型の電気自動車に向けた設計を自動車メーカー各社と進めているという。

図3 リーフ用「車載アダプター」の外観。出典:Evatran Group

 第2の部品が「駐車パッド」だ。図2では「F」となっている。送信コイルを内蔵しており、駐車スペースの床に固定して使う。寸法は55.9×45.7cm。高さは6.35cmあり、たとえ乗り上げたとしても680kgまで耐えられる。

 第3の部品は「コントロールパネル」だ。壁などに取り付けて使う。図2では電力を送る「E」と情報を表示する「D」に分かれたデザインになっているものの、最終版の製品では統合されている。

 ワイヤレス充電器を使う際には駐車位置をなるべく所定の位置に合わせる必要がある。位置が合っていないと送電効率が落ち、充電時間が長くなってしまうからだ。

 車載アダプターを搭載した車が駐車パッドの約15m以内に近づくと、コントロールパネルが車の接近を感知、約3m以内に近づくと小型表示画面に、駐車パッドと車の相対位置を表した「アイコン」が表示される。車を進めて「STOP」マークが表示されたらそこで停車すれば良い。ワイヤレス充電器による充電状況の他、診断情報を表示する機能もある。なお、コントロールパネルへの入力電力は、240V、30Aの交流が推奨されている。

 第2の部品と第3の部品は、ボッシュの認定電気技術者が取り付ける契約だ。つまり、ワイヤレス充電システムの取り付けに関する全てのサービスをボッシュが扱う。

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