電気自動車の充電器をどこに置く、252基を置く岐阜県の事例法制度・規制

電気自動車の普及には充電インフラ、それも急速充電器のインフラが必要だ。ではどこに設置すれば良いのか。252基の設置を計画した岐阜県の例を紹介する。

» 2013年05月28日 15時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電気自動車はまだまだインフラが十分に整っていない。特に問題になるのが充電器だ。自宅から1日に1〜2回、10km先へ買い物に行き、戻ってくるという使い方であれば自宅に普通充電器を備えておけばよい。話はそれでおしまいだ。

 だが、旅行など遠隔地に出掛けるような使い方であれば、急速充電器がどうしても必要だ。フル充電の状態で出発し、残量がなくなって時点で急速充電器を使う。電気自動車の種類によっても異なるものの、普通充電器では充電に数時間を要する。これでは間に合わない。急速充電器であれば、これが30分で済む*1)。休憩や食事の間に終わるだろう。

*1) 経済産業省によれば、航続距離160kmの電気自動車を200Vのポール型普通充電器で充電にするには約7時間を要する。急速充電器であれば、約30分だ。

 課題は設置コストだ。急速充電器を設置するには工事費を除いたとしても100万円以上の初期投資が必要になる。電気自動車の普及にまかせておくと、いつまでもインフラが出来上がらない。そこで、経済産業省は補助事業として「次世代自動車充電インフラ整備促進事業」を実施中だ。具体的には充電器の設置費用などに補助金を支給する。

どこに設置すればよいのか

 急速充電器が必要なことは分かった。では、どこに設置すれば良いのか。ここで地方自治体の整備計画が重要になる。なぜなら、経済産業省の補助金は、地方自治体の整備計画に合致している場合は3分の2、そうでないなら2分の1になるからだ。

 2013年5月に次世代自動車振興センター*2)から、補助事業の基準としての承認を受けた岐阜県の事例を紹介する。

*2) 次世代自動車振興センターは、経済産業省から今回の補助事業の業務を受託した団体。

 岐阜県は日本の中央部に位置し、都道府県としては第7位の面積だ。南部は高速道路である中央自動車道が東西に延び、名古屋経済圏(愛知県)との結び付きが強い。林野庁によれば、岐阜県の森林面積比率は82%に上り、これは高知県に次いで全国2位だ。つまり、愛知県沿いの南部だけが平野部にあり、大部分が山間地だということになる。

 このことは、面状の道路の広がりがあるのは南部だけであり、それ以外は線状だということを意味する。これが充電器を設置する際の前提になる。

 岐阜県の方針は、公共性*3)を保ちつつ、県の地理的な条件に合わせた充電器の設置を進めるというものだ。県内全域が電気自動車の行動範囲となるようインフラを整備する。

*3) 公共性の条件として3点を定めている。まず、充電器設備の入り口が公道に面しており、自由に入れること、第2に他のサービスの利用や購入を前提としていないこと(駐車料金を除く)、第3に利用者を限定しないことだ。会員制を採っていてもその場で支払って利用できるものは除く。

 一般に開放されている急速充電器は現在21基にとどまり、自動車販売店を中心に県南部に偏っている(図1)。これでは県内全域へは移動できない。

図1 急速充電器の設置状況。出典:岐阜県

 分かっていることはもう1つある。利用頻度だ(図2)。県南部では1カ月の利用回数が100回を超える地点もある。しかし、山間地では30回以下である。交通量を反映した設置が必要だ。図2には主要道の交通量と、充電施設の利用回数が描かれている。

図2 急速充電器の利用頻度。出典:岐阜県

 以上の情報から、充電インフラを整備する方向性を3つ打ち出した*4)

  1. 道の駅へ導入する
  2. 南部は交通量に応じて設置する
  3. 観光地に導入する

 1番目の方針は、道の駅*5)の利用だ。岐阜県には道の駅が多い。全国第2位の54カ所もある。道の駅は岐阜県内の道路沿いに満遍なく位置しているため、急速充電器の拠点に適しているという判断だ。2番目の方針は、道路交通センサスのODデータ*6)を用いて交通量を推定、これに応じた基数を配置するというもの。3番目の方針は、旅行客など長距離移動をするユーザーを対象にしている。

*4) 岐阜県は2013年、市町村に対し設置場所に関するアンケートを実施している。これによれば、大型商業施設や駅周辺、道の駅、事業者の導入促進が可能な地点、高速道路との接続点、役所・役場、主要幹線道路沿いの飲食店への導入が必要だという意見が集まったとした。
*5) 道の駅とは国土交通省が登録した一般道向け道路施設。休憩施設と地域振興施設が一体化されている。2013年3月末時点で全国に1005カ所ある。
*6) 道路交通センサスとは国土交通省が全国規模で道路交通の実態を把握するための基礎資料を得る目的で実施する調査。2〜5年間隔で実施する。OD調査(自動車起終点調査)はドライバーへの聞き取り調査である。

 3つの方向性を具体化した結果は以下の通りだ。まず、急速充電器は252基を設置する。内容は54カ所の道の駅全てに1基を設置、加えて、主要道路沿いの施設や駅に94基を設置、これらの設置基数と交通量から算出した必要基数との差となる104基である*7)。合わせて普通充電器も555基配置する計画だ。

*7) 2003年3月時点の99の旧市町村に対して、最低1基を保証する形になっている。

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