ヒマワリのように背が高いメガソーラー、北海道の気候に合わせる自然エネルギー

雪国のメガソーラーでは積雪対策が欠かせない。北ガスジェネックスが北海道石狩市に建設した事例では、日本一高い架台で積雪に対応した。しかし、冬季は雪が滑り落ちないこともあるという。なぜこのような設計にしたのだろうか。

» 2013年10月07日 11時20分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 北海道夕張市と発電所の位置

 日本一背が高いというメガソーラーが北海道石狩市に完成する。太陽電池モジュールは太陽光を受けやすいよう地表に対して斜めに取り付ける。その一番低い部分の高さ(最低地上高)を2.0mになるよう設計した。なぜこれほど高くしたのか。

 出力1.2MWのメガソーラー「ソーラーファーム石狩」(石狩市新港中央)を立ち上げたのは北海道ガスの100%子会社である北ガスジェネックスだ(図1、図2)。「日本一背が高くなったことには理由がある。建設地の積雪は気象庁の統計では1.4mだが、1.4mに合わせると高さが不足する。メガソーラーは大きな構造物なので風の流れが変わり、雪庇(せっぴ)ができる。さらに太陽電池から滑り落ちた雪が堆積する」(北ガスジェネックス)。雪庇とは本来山の稜線の風下側にできるひさしのような雪の吹きだまりを指す用語だが、メガソーラーでもこのようなものが成長するという指摘だ。

 ソーラーファーム石狩にはもう1つ特徴がある。太陽電池モジュールの傾斜角が30度しかないのだ。雪のない地方では傾斜角を日本の緯度に近い30度とすることは常識だ。だが、雪の多い地方ではそうではない。「札幌近郊では雪を滑り落ちやすくするために傾斜角を45度とすることが一般的」(同社)。ではなぜ30度にしたのか。「年間発電量を重視したためだ。30度にすると、冬季は積もった雪が残ってしまって発電しない。だが、夏季を考えると45度では年間発電量が少なくなってしまう」(同社)。

 雪が積もったままということは雪の重みに耐えなければならないということだ。「積雪荷重が5400パスカルと強い太陽電池モジュールを採用したことに加え、モジュールの背面を支える部材(垂木)の本数を通常の倍に増やした」(同社)。

 なお、建設地は海から1km程度しか離れていないため、雪害の他、塩害にも対応した機器を導入している。

図2 ソーラーファーム石狩。出典:北ガスジェネックス

NTTファシリティーズが設計

 北ガスジェネックスはソーラーファーム石狩を建設するため、グループ調達で約4億円を集め、2013年5月に着工、2013年10月に完成し、運転を開始した。敷地面積は約2.9haであり、3分の2が北海道ガスの社有地、残り3分の1が北ガスジェネクスの社有地だ。北海道ガスの社有地については、グループ内での土地使用料の授受があるという。なお、メガソーラーの敷地は、ガス工場から高圧で送出されたガスを減圧して、中圧導管に送り出す施設である北海道ガスのガバナステーションの敷地に隣接している。

 設計・調達・建設(EPC)を担当したのはNTTファシリティーズだ。冒頭で紹介した2mの架台は同社の既製品を設計し直したものである。太陽電池モジュールはパナソニックの既製品を利用した。完成後の管理・運営(O&M)は北ガスジェネックスとNTTファシリティーズが担う。

 想定年間発電量は117万kWhであり、固定価格買取制度(FIT)を利用して、全量を20年間北海道電力に売電する。kWh当たりの売電単価は40円(税別)。

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