地熱発電を短期間に開始できる方法がバイナリー発電である。長野県北部の高山地帯にある温泉ホテルが、小型のバイナリー発電装置を導入して温泉発電に挑む。90度前後の温泉を使って最大20kWの電力を供給できるほか、発電後の温水をハウス栽培にも利用する計画だ。
長野県の山深い場所にある「七味(しちみ)温泉ホテル」には9本の源泉があって、90度前後の白濁した温泉水が豊富に湧き出る(図1)。この温泉水の再生可能エネルギーを使って自家発電に取り組むため、小型のバイナリー発電装置を2014年3月中に導入する予定だ。
バイナリー発電装置はIHIの「ヒートリカバリー“HRシリーズ”」を採用した。横幅が2メートルの小型の発電装置である(図2)。95度以下の温水で最大20kWの電力を供給することができる。
設置工事が簡単に済む点が特徴で、温水と冷却水の出入口の配管のほかに、電気系統を接続するだけで設置が完了する。発電した電力を売電できるように系統連系機能も標準で装備している。
七味温泉ホテルは客室数が18室の宿泊施設であることから、発電した電力をホテル内で利用するだけでなく電力会社に売電できる見込みだ。中小規模の地熱発電は買取価格が1kWhあたり40円(税抜き)に設定されていて、太陽光発電の2013年度の買取価格である36〜38円(同)よりも高い。
冬の寒さが厳しい山岳地帯では、天候に関係なく電力を供給できる地熱発電は停電対策としても有効だ。そうしたメリットに加えて、七味温泉ホテルでは発電装置から排出する温水をハウス栽培に利用することも検討している。温泉地域に恵まれた自然の地熱エネルギーを最大限に活用していく。
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