九州の北部を営業拠点にする国内第4位の西部ガスが大規模な火力発電所の事業化調査を開始した。電力会社の火力発電所に匹敵する160万kW級を北九州市の臨海地域に建設する計画で、2020年度の運転開始を目指す。建設予定地の隣にはLNG(液化天然ガス)の基地がまもなく完成する。
西部ガスが大規模な天然ガス火力発電所を建設する場所は、北九州市が「地域エネルギー拠点化推進事業」の中核に据える響灘(ひびきなだ)地区にある。すぐ隣には西部ガスが2010年から建設を進めている「ひびきLNG(液化天然ガス)基地」が2014年末までに完成する予定だ(図1)。
LNG基地が運転を開始すると、輸送船を小型から大型に変更して、調達コストを大幅に低減することが可能になる。ひびきLNG基地に10%を出資する九州電力が火力発電のコスト削減に生かす一方で、90%を出資する西部ガスみずからもLNG基地のメリットを生かして火力発電事業に参入する。
最先端のコンバインドサイクル方式による高効率の発電設備を導入して、160万kW級の天然ガス火力発電所を建設する計画だ。コンバインドサイクル方式で標準的な40〜50万kW級の設備を順次稼働させていく案が有力である。今後は国や自治体とのあいだで環境影響評価のプロセスを進めて、2020年度からの運転開始を目指す。
建設予定地の響灘地区は北九州市がエネルギーの一大拠点を形成する計画を推進している。太陽光や風力などの再生可能エネルギーに加えて、高効率の火力発電所を積極的に誘致する方針だ(図2)。西部ガスは地元自治体の後押しを受けて建設計画を進めることができる。
ガス会社では最大手の東京ガスがグループ会社で4カ所のガス火力発電所を運営しているほか、大阪ガスも110万kWの大規模な天然ガス火力発電所を大阪府の堺市で2009年に稼働させた。両社とも企業向けに電力の小売事業を展開して収益を拡大している。
これまで西部ガスの電力分野の取り組みは太陽光発電にとどまっていたが、火力発電所の運転開始に向けて小売事業にも参入する見通しだ。電力会社とガス会社の競争が全国各地で激しくなっていく。
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