火力発電の効率を高める「コンバインドサイクル」キーワード解説

日本の電力は火力発電が中心になっていることから、燃料費とCO2排出量の削減が大きな課題だ。化石燃料から電力を作り出す効率を高める必要があり、最も有効な方法が「コンバインドサイクル」である。日本の技術は世界のトップレベルを誇り、最近では石炭火力でも実用化が始まった。

» 2013年11月22日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 火力発電の増加によって、CO2排出量が再びクローズアップされている。温暖化対策にはCO2排出量を抑制することが不可欠で、解決策のひとつは発電効率を高めることだ。同じ量の化石燃料からより多くの電力を作り出す取り組みが国内で進んできた。

 かなめになる技術が「コンバインドサイクル」である。最新のガス火力では主流になっている発電方法で、東京電力や関西電力をはじめ大規模な火力発電所に相次いで導入されている。

 火力発電には大きく分けて2種類の方法がある。空気を熱して発電用のタービンを回すか、水を熱して発生する蒸気でタービンを回すか、どちらかの方法を利用する。この2種類を組み合わせた発電方法がコンバインドサイクルである。最初に空気を熱して発電した後に、その排熱を使って蒸気を発生させて2回目の発電を実行する(図1)。

図1 「コンバインドサイクル」による発電設備。出典:関西電力

 1回の燃焼によって2回の発電が可能になるため、同じ量の燃料からより多くの電力を作り出すことができる。ただし排熱は燃焼時の熱ほど高温ではなく、発電効率は2倍までにはならない。天然ガスを使った通常の火力発電では40%前後だが、最新のコンバインドサイクルの発電効率は60%近くまで上昇する(図2)。

図2 ガス火力発電の技術進化。出典:経済産業省

 実際に関西電力が兵庫県の姫路第二発電所の設備を更新中で、天然ガスによるコンバインドサイクルを採用して60%の発電効率を実現している。ここで言う発電効率は熱エネルギーから電気エネルギーへ転換できる比率を表す。熱量の単位であるkcal(キロカロリー)から電力量の単位であるkWh(キロワット時)に変換して計算する(1kWh=860kcalで換算)。

 これまでコンバインドサイクルは天然ガスを燃料にした発電設備にしか適用できなかったが、最近は石炭を燃料にした発電設備にも応用できるようになってきた。石炭をガス化してから燃焼させる方法で、IGCC(石炭ガス化コンバインドサイクル)と呼ばれている。

 通常の石炭火力発電の効率はガス火力よりも低くなるが、IGCCでは50%以上に高めることが可能だ(図3)。火力発電は燃料の燃焼温度を高くすることによっても効率を上げることができる。今後は燃焼温度を高めながら、コンバインドサイクルによる発電効率を引き上げていく。

図3 石炭火力発電の技術進化。出典:経済産業省

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