最新の火力発電設備が試運転開始、関西電力の供給力が大幅増加電力供給サービス

関西電力の姫路第二発電所で最新の火力発電設備が試運転を開始した。1基の最大出力は48.65万kWと大きく、今後2年間で合計6基が稼働する予定だ。これにより供給力は従来と比べて127万kWも増加し、原子力発電所の1基分を上回る発電量になる。CO2排出量も30%減少する。

» 2012年11月16日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 姫路第二発電所には1号機〜6号機まで6基の火力発電設備があるが、従来の設備は1963年〜1973年に運転を開始したもので、すでに1号機〜3号機は2010年に廃止されている。関西電力は6基すべてを天然ガスによるコンバインドサイクル発電方式に切り替える計画を進めており、まず1号機が11月15日に試運転を開始した(図1)。

図1 姫路第二発電所の設備更新計画。出典:関西電力

 コンバインドサイクル発電はガスを燃焼してタービンで発電した後に、燃焼時の高熱で水を蒸気に変えて別のタービンを回して発電する。2回にわたって電力を作り出すことができるため、ガスから電力への変換効率が従来の42%から60%へ大幅に向上する。

 CO2排出量も電力1kWhあたり30%少なくなり、火力発電で問題視される環境負荷を減らすことができる。旧来方式の設備は蒸気による発電だけが可能で、各電力会社は老朽化した火力発電設備を順次コンバインドサイクル方式に更新している。

 関西電力は11か所の火力発電所を保有しており(図2)、その中で姫路第二は最大の発電能力がある。現在は4号機〜6号機で合計165万kWの最大出力だが、2015年10月までに6基すべてをコンバインドサイクル方式で運転開始する予定になっている。6基を合わせると最大出力は292万kWになり、現在よりも127万kWも増加する。原子力による大飯発電所の1基分が118万kWであることから、それを上回る供給力の増加を見込めるわけだ。

図2 関西電力が保有する火力発電所の設備と最大出力(単位:万kW)。出典:関西電力

 新しい姫路第二の1号機は2013年9月まで試運転を続け、10月から正式に「営業運転」を開始する。関西電力によれば、「試運転中は安定した供給力として期待することが困難」であるため、今冬や来夏の需給見通しには含めない方針だ。しかし試運転でも最大出力で発電することが可能で、発電した電力は通常通り供給できる。

 関西電力は2号機以降の運転開始時期を公表していないが、6基をほぼ等間隔で順次運転を始めると想定すれば、2013年春には2号機が試運転に入る。その結果、夏までには2基で97.3万kWの供給力が増加する。

 今夏の関西電力の供給力は大飯発電所の原子力発電設備が2基稼働したことにより、最大需要を310万kWも上回った(図3)。2基が稼働しなかった場合には予備率2.4%という停電リスクを伴う状況になっていたが、姫路第二の1号機と2号機を加えれば、来夏の供給力は3.5%増えることになり、最大需要が今夏と同じレベルだとしても予備率は5%以上に高まる。供給力の点では大飯発電所の稼働を続ける必然性がなくなってきた。

図3 関西電力の2012年8月の供給力。出典:関西電力

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