下水処理のバイオガスで500世帯分の電力、自治体は支出ゼロで収入と温水を得る自然エネルギー

自治体が運営する下水処理施設はバイオマス資源を大量に排出している。下水処理の過程で発生するガスは再生可能エネルギーになり、固定価格買取制度を適用すれば太陽光発電よりも高い価格で売却できる。長崎県の大村市は発電設備のメーカーと組んで2014年10月から発電事業を開始する。

» 2014年03月18日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 大村市は下水処理設備のメーカーである月島機械と契約を結んで、市が運営する「大村浄水管理センター」に発電設備を導入する。下水処理の過程で発生する「消化ガス」を燃料に使って発電する方式で、設備の建設から運営までを月島機械が引き受ける。大村市は消化ガスと土地を提供する代わりに、ガス料金や土地使用料を受け取る仕組みだ(図1)。市の資金負担は一切ない。

図1 「大村浄水管理センター消化ガス発電事業」のスキーム。出典:月島機械

 発電設備は10台のガスエンジンで構成して、合計250kWの電力を供給することができる(図2)。年間の発電量は190万kWhを見込み、一般家庭で500世帯分の電力使用量に相当する。2014年10月から発電を開始して、全量を九州電力に売却する計画だ。すでに固定価格買取制度の認定を2014年2月に受けている。

図2 消化ガス発電設備の完成イメージ。出典:月島機械

 下水処理で発生する消化ガスを使った発電設備は建設費・運転維持費ともに高く、それに合わせて買取価格は太陽光発電よりも高い1kWhあたり39円(税抜き)に設定されている。大村浄水管理センターの発電事業では年間の売電収入が7400万円になり、買取期間の20年間の合計で約15億円が見込まれる。

 この売電収入をもとに、月島機械は大村市に対して消化ガスの料金のほか、発電設備の土地使用料と固定資産税を支払う。さらに発電時の熱を使って温水を作り、浄水管理センターに供給する。

 これまで大村浄水管理センターでは発生した消化ガスを燃焼して処分していた。今後は処分費用がかからなくなるうえに収入と温水を得ることができ、再生可能エネルギーによる電力を供給することでCO2排出量の削減にも生かせる。

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