下水処理場の役割はきれいな水を作り出すことだ。今後はさらに発電所としても機能するようになる。これが神戸市の狙いだ。神戸市は初期投資ゼロで年間3000万円以上の発電収益が得られるビジネスモデルを採用し、エナジーバンクジャパンとの共同事業方式で実現する。
神戸市とエナジーバンクジャパン(EBJ)は共同事業方式を採用し、2種類の再生可能エネルギーを利用した発電に取り組んでいる。
下水処理用の神戸市の施設「垂水(たるみ)処理場」(神戸市垂水区、図1、図2)を舞台に進む「こうべWエコ発電プロジェクト」だ。
「Wエコ」とは太陽光発電とバイオガス発電の2種類の発電を処理場内で同時に進めることを指す。Wエコを実現するのは垂水処理場が国内でも初の事例になるという。
神戸市とEBJは2013年6月に契約を締結。固定価格買取制度(FIT)に関する手続きを順次進め、2013年9月には太陽光発電システムの工事に着工、続いて同11月にはバイオガス発電システムにも取り掛かった。2014年3月の発電開始を目指す。
同プロジェクトの特徴は、共同事業方式であること。神戸市によれば、全国に例を見ない事業方式だという。神戸市にとっての最大のメリットは発電事業の総投資額が約10億円であるにもかかわらず、投資ゼロ*1)で収益が得られることだ。「土地」を無償で提供する代わりに、発電設備などに費用を投じる必要がない。それにもかかわらず発電設備から得られる年間売電収入、約1億7000万円のうち、2割程度を得られる。
*1) 後ほど触れるガス精製は神戸市側が負担する。
発電事業の概要と役割分担を図3に示す。神戸市は垂水処理場の敷地を提供し、汚泥から作り出したバイオガス(消化ガス)を発電設備に供給する。EBJは太陽光とバイオガスの両方の発電設備を設置し、所有する。関西電力とFITに従った契約を結び、発電所を運営。売電額のうち約8割を受け取る。
図3によれば、神戸市はEBJからバイオガス発電で生じた熱も受け取る。これは何に使うのだろうか。「発酵によって汚泥からバイオガスを効率良く作り出すためには適切な温度まで汚泥を加熱する必要がある。ここに熱を利用する」(神戸市建設局下水道河川部保全課)。加熱のため新たな燃料や電力を使わないため、トータルに見て、ガスの持つエネルギーを無駄にしない取り組みだ。
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