関西国際空港が「水素エアポート」へ、燃料電池車や水素ステーションを展開スマートシティ(1/2 ページ)

「環境先進空港」を目指す関西国際空港で水素エネルギーの導入が始まる。2016年度までの3年間に、燃料電池フォークリフトや水素ステーションを空港内に配備するほか、大阪国際空港と直結するバスにも燃料電池車を採用する。太陽光や風力と組み合わせた水素発電システムも検討中だ。

» 2014年05月22日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 アジア初の「水素グリッドエアポート」を目指して、関西国際空港で取り組む分野は3つある(図1)。第1に貨物の領域で水素エネルギーを活用する。空港内で使用するフォークリフトを燃料電池車に切り替えながら、燃料になる水素を供給するためのインフラを整備する計画だ。

図1 「水素グリッドエアポート」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:新関西国際空港

 燃料電池を搭載したフォークリフトは2016年度から年間に数十台ずつ増やしていく。この水素エネルギーの導入プロジェクトは「関西イノベーション国際戦略総合特区」の一環で推進するもので、関西国際空港をアジア地域における国際物流ネットワークのハブにする狙いもある。

 貨物分野の取り組みと並行して、2014年度中に水素ステーションを建設する。近隣の大阪国際空港にも同様の水素ステーションを設置して、2つの空港を直結する燃料電池バスを運行させる予定だ。関西地域で燃料電池自動車の普及を促進することが第2のテーマになる。

 さらに第3の取り組みとして水素発電システムの導入計画がある。災害に強い分散型のエネルギー供給体制を構築するために、空港内で稼働している太陽光発電や風力発電と組み合わせて、停電時にも電力と熱を供給できるようにする構想だ。

水素の貯蔵施設や配管を3年以内に整備

図2 燃料電池フォークリフト。出典:豊田自動織機

 関西国際空港が導入する燃料電池フォークリフトは、トヨタ自動車と豊田自動織機が共同で開発したもので、現在は実証実験の段階にある(図2)。燃料の水素を補充する時間は3分で済み、8時間連続で運転することが可能だ。

 2015年度までを第1ステップとして、貨物の運搬用に2台の燃料電池フォークリフトを導入する。利用する場所はクリーンな作業環境が求められる医薬品の専用共同定温庫などを予定している。 そのために小規模な水素供給施設も設置する(図3)。

図3 燃料電池フォークリフトと水素インフラの展開計画(画像をクリックすると拡大)。出典:新関西国際空港

 続けて2016年度までの第2ステップでは、貨物用の建屋の中に液化水素貯蔵施設と高圧水素配管を設置してインフラを整備する計画だ。配管を通してディスペンサーからフォークリフトに水素を供給できるようになる。水素供給インフラの構築は岩谷産業が担当する。

 インフラの整備に合わせて、2016年度からは年間に数十台の燃料電池フォークリフトを導入して本格的な運用を目指す(図4)。10年後の2025年度までに数百台の規模に拡大させる構想で、同時に貨物のコンテナを航空機に配送するためのトーイングトラクターも燃料電池車に切り替えていく。

図4 燃料電池(FC)フォークリフトと水素インフラの導入スケジュール。出典:新関西国際空港
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