小さな植物工場にもニーズあり、温泉熱や地下水熱を利用自然エネルギー(1/2 ページ)

NTTファシリティーズは青森県の医院関連施設に小型の植物工場を納入した。安心できる食材を安定供給したいという顧客のニーズに応えた形だ。導入した医院は温泉地域に位置するため、植物工場に温泉熱空調や地下水熱空調を導入した。

» 2014年05月27日 16時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 青森市と植物工場の位置

 植物工場といえば、巨大な空間に大量の水耕栽培設備を並べた姿を思い浮かべるかもしれない。しかし、植物工場の可能性は小型の設備にも十分ある。自家消費に近い形の植物工場だ。

 NTTファシリティーズが2014年5月に発表した植物工場がそれだ(図1)。医療法人蛍慈会石木医院(青森市浅虫)に納入した植物工場は設置面積17m2、定植数は672株。「石木医院は介護療養型老人保健施設であり、高齢者用施設には外部利用可能なレストラン『浅めし食堂(ストンキ)』を併設している。ここに食材を安定供給する必要がある。青森で葉物野菜を栽培しようとすると冬季に課題があるため、安定して野菜を供給可能な植物工場を石木医院が選択した」(NTTファシリティーズ)。

小型植物工場に向く設備とは?

 植物工場を設置した建物は、石木医院に隣接した空き店舗。従って設置スペースがもともと限られている。「当社の標準パッケージはコンセントと給排水設備があれば6畳間から設置できる。標準パッケージは4段式の棚が2つあり、間口が2.4m、奥行きが2.7m、高さが2.2mあればよい」(同社)。

 今回の事例では標準の4段式を2棚(図2の右側の前後)と、3段式を2棚(左側の前後)設置した。従って棚が占める面積は約13m2にすぎない。

図2 完成した「植物工場」。棚の数は左右合わせて4つ。青森県初の医療・介護系事務所への植物工場の導入であるという 出典:NTTファリシティーズ

LEDよりも冷陰極管が適する理由

 石木医院に導入した植物工場には小型であること以外に3つの特徴がある。まず、省エネ性だ。NTTファシリティーズの植物工場ではLEDランプを使わずに省エネ性を高めている。「LEDランプでは特定の波長に光が偏る。小規模な植物工場では顧客が(適した光の波長が異なる)さまざまな作物の栽培を望む。そこでLEDと比較すると全波長に満遍なく発光する冷陰極管(CCFL)*1)を用いた」(同社)。蛍光灯は安価だが、発熱量、消費電力とも冷陰極管よりも大きくなり、野菜の「葉焼け」などを起こしやすくなるという。「採用した冷陰極管は当社が植物工場用として特注したものであり、光量が一般的な製品よりも10%増えている。光量は200μmolだ*2)」(同社)。

 熱負荷の小さい冷陰極管を採用したことで、空調に必要な電力を減らすことができるという。「24時間換気と自然排気を組み合わせているため、熱負荷の問題は大きい。なお、冷陰極管は管面がさほど加熱しないため、収穫などの際に手で触ってもやけどなどの恐れはない」(同社)。

*1) 冷陰極管は蛍光灯と似た原理で発光するランプ。蛍光灯よりも効率よく光を取り出すことができ、寿命も長い。鉄道の駅などで広告板のバックライトとして使われている他、LEDを利用していないノートPCのバックライトにも採用されてきた。
*2) μmolは光合成などに利用可能な光子の数を表現する際に用いる単位。200μmol/m2・秒とは、真夏の直射日光の約10分の1、天井に設置した場合の蛍光灯直下の約20倍に相当する。

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