2040年に化石燃料を代替する、「水素・燃料電池」の技術革新水素エネルギーの期待と課題(1)(1/2 ページ)

自動車から電力まで化石燃料に依存する日本のエネルギーが大きな転換期を迎えている。新たなクリーンエネルギーとして水素の用途が広がり、CO2排出量の削減とエネルギー自給率の向上を一挙に実現できる可能性が高まってきた。製造〜貯蔵・輸送〜利用の各局面で国を挙げた取り組みが進む。

» 2014年08月04日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本がエネルギーの分野で抱えている重大な問題点は3つある。第1にエネルギー源の石油・石炭・天然ガスといった化石燃料をほぼ100%輸入に頼っている。第2に原子力発電の安全神話が崩れて、火力発電の増加でCO2排出量が増えてしまった。さらに第3の問題は電力の大半が大規模な発電所で集中的に作られているために、事故や災害による停電リスクがあることだ。

 これらの問題を解決する手段として再生可能エネルギーに期待がかかるが、政府の方針があいまいなこともあって、欧米の先進国並みに普及するかどうかは見込みにくい。そこに新たなクリーンエネルギーとして急浮上してきたのが水素だ。再生可能エネルギーと水素エネルギーを組み合わせれば、日本が抱えるさまざまな問題を改善することができる(図1)。

図1 水素エネルギーの意義。出典:資源エネルギー庁

水素は必要な時に必要な量だけ使える

 政府は先ごろ「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表して、2040年を目標にCO2フリーの水素供給システムを全国に展開する構想を明らかにした。トヨタ自動車が世界に先駆けて2015年初めに燃料電池自動車を発売することからもわかるように、日本は水素・燃料電池の分野で世界の最先端を走っている。国の長期的な成長戦略としても有望なことは間違いない。

 これから水素エネルギーの導入拡大に向けた取り組みが「製造」「貯蔵・輸送」「利用」の3つの領域で並行して進んでいく(図2)。製造面では化石燃料や工場の副生物から水素を取り出す方法に始まり、次のフェーズでは太陽光や風力などの再生可能エネルギーで生み出した電力から水素ガスを製造する「Power to Gas」が拡大する見通しだ。

図2 水素エネルギーの導入拡大イメージ。出典:資源エネルギー庁

 電力の最大の難点は貯蔵が難しいことにある。大型の蓄電池を使っても貯蔵できる電力量には限界がある。せっかく再生可能エネルギーで大量の電力を作り出しても、需要を上回った分のほとんどは利用できない状況になってしまう。

 これに対して水素は天然ガスと同様に、液化して貯蔵・輸送することが可能だ。再生可能エネルギーによる余剰電力を使って水を電気分解すれば、水素と酸素を作ることができる。水素は液化してタンクローリーやタンカーで運ぶことができるため、需要の大きい地域に必要な時に供給できる。

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