全世界の発電量の68%は火力で作る、水力が原子力を上回る現実データで見る世界と日本のエネルギー事情(1)(1/2 ページ)

資源エネルギー庁が毎年まとめる「エネルギー白書」には、各国の電源構成から再生可能エネルギーの進展状況、化石燃料の生産量・埋蔵量まで、世界と日本のエネルギーに関するデータが豊富に入っている。主要な5つのテーマに分けて、注目すべきデータを拾っていく。第1回は電源構成である。

» 2014年08月11日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 世界各国のエネルギー政策の基本になるのは、「エネルギーミックス」を決めることである。火力・原子力・水力・再生可能エネルギーの4種類の電源をどのような比率で配分するのか。それによって発電設備の技術開発の方向性から、化石燃料の調達計画に至るまで、産業界を含めて国全体の長期的な取り組みが大きく変わってくる。

 まず世界全体のエネルギーミックスの現状を見てみる。発電設備の容量(最大出力)で集計すると、2011年の時点では石炭が最も多くて31.9%を占める。次いでガスが25.9%、水力が19.4%で、石油は8.0%、原子力は7.2%と意外に少ない(図1)。それ以外の電源は再生可能エネルギーによるもので、すでに原子力と同程度の規模になっている。

図1 世界の発電設備容量と発電電力量(2011年)。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)

 エネルギーミックスは発電設備の容量のほかに、実際に発電した電力量で算出する方法もある。燃料の使用量やCO2の排出量を判断する場合には発電電力量で見るほうが適している。そうすると石炭の比率はさらに大きくなって41.3%まで上昇する。設備利用率(最大出力に対する年間の発電電力量)が他の電源よりも高いからである。

 さらにガスと石油を加えると火力発電の比率は68%になり、全体の3分の2以上を占める。世界のCO2排出量が増加する大きな要因として、火力発電が問題視されるのも当然の状況だ。今後は原子力を増やしていくのか、あるいは水力を含めて再生可能エネルギーを拡大すべきか、国によって政府の方針は大きく違う。

 その様子は主要国のエネルギーミックスの現状を見れば一目瞭然である(図2)。最新のデータが2011年であるために、日本の原子力の比率は10%になっている。日本よりも火力発電の比率が高いのは中国だけだ。ただし燃料費の安い石炭火力が79%も占める一方で、発電コストが高い石油火力はほとんど使っていない。日本の最大の問題点は石油火力の比率が高いことにある。

図2 主要国の発電電力量と電源構成(2011年。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)
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