日本のエネルギー政策は長年にわたって石油を重視してきた。発電設備の容量で見ると、1970年代から40年以上も同様の規模を維持している(図3)。そのあいだに石油の価格は一貫して高い水準で推移した。一方で発電効率の高いLNG(液化天然ガス)による火力発電を増加させたものの、石油火力を減らさなかったことは失策と言える。
実際に発電した電力量では2011年から原子力が急減して、エネルギーミックスは大きく変化した(図4)。2012年には石炭・LNG・石油を合わせた火力発電の比率が88.4%まで上昇している。日本よりも水力発電の比率が高い中国を抜いて、主要国の中では火力発電の比率が最高になった。
こうした状況を短期間に改善することは難しい。今後は原子力発電所の再稼働が進んでいく見込みだが、原子力の発電コストが火力を上回ることは多くの専門家が指摘している。CO2の排出量は減るものの、国全体で見た発電コストはむしろ増大すると考えるべきだろう。
長期的には再生可能エネルギーを拡大する方向が望ましいが、すでに3割近い比率に達しているイタリアやドイツの水準まで引き上げるには相当の時間が必要になる。政府が長期的な視点でエネルギーミックスを決定して実行することの重要性を改めて実感させるデータである。
第2回:「再生可能エネルギーが20%を突破、日本は水力と太陽光で第5位」
第3回:「火力と原子力で決まるCO2排出量、2035年には全世界で1.2倍に増加」
第4回:「天然ガスと石炭はオーストラリア産が最大、原油の中東依存は変わらず」
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