火力と原子力で決まるCO2排出量、2035年には全世界で1.2倍に増加データで見る世界と日本のエネルギー事情(3)(1/2 ページ)

地球の温暖化に影響を及ぼすCO2の排出量が火力発電で増えている。1990年から2011年に全世界で1.5倍、さらに2035年までに1.2倍の増加が見込まれる。CO2を排出しない原子力発電は特定の国に偏在していて効果は小さい。最大の課題は火力発電の効率で、日本は最高水準を維持している。

» 2014年08月25日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第2回:「再生可能エネルギーが20%を突破、日本は水力と太陽光で第5位」

 世界の国々にとってエネルギーの自給率を高く保つことは、社会の安定にも貢献する重要な指標である。先進国が集まるOECD(経済協力開発機構)の加盟34カ国のあいだでは、1次エネルギー(自然界に存在するエネルギー源)の自給率に大きな開きがある(図1)。第1位のノルウェーは600%を超える一方、最下位から2番目の日本はわずか6%にとどまっている。

図1 OECD加盟国の1次エネルギー自給率(2012年の推計値。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)

 日本のエネルギー自給率が低くなった要因の1つは原子力発電の低下だ。2010年には原子力だけで15%の自給率を確保できていたが、2012年には0.6%まで減少した。政府がエネルギー自給率の向上を目指して原子力発電を推進してきた構想は完全に行き詰まっている。

 原子力発電の設備容量では、日本は米国とフランスに次いで第3位である(図2)。この3カ国で全世界の5割以上を占めていて、発電設備の建設・運転ノウハウも集中する。今後の原子力発電は3カ国の動向によって大きく変わるが、米国では経済性を理由に運転を停止するケースが目立ってきた。

図2 世界の原子力発電の設備容量。出典:資源エネルギー庁(IAEAの資料をもとに作成)

 日本では福島第一原子力発電所の事故を契機に、原子力発電からの脱却を求める世論が高まっている。とはいえエネルギー自給率の問題に加えて、火力発電による燃料費とCO2排出量の増加、さらには国家安全保障の観点から原子力技術を維持する必要性もあり、政府は安全性を確認できた原子力発電所から再稼働を認める方針だ。

 現在のところ国内には稼働できる状態の原子力発電設備が44基ある(図3)。このうち18基が原子力規制委員会による適合性審査の対象になっている。18基すべてが稼働すると発電能力は1780万kWに達して、電力会社の総発電量の1割近くをカバーできる。その分だけ火力発電が減って、CO2排出量も少なくなる。ただし放射能汚染の危険からは逃れられない。

図3 日本の原子力発電所(2014年5月20日時点。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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