日本の再生可能エネルギーの中で導入量が最も多いのは水力発電だ。大規模なダムを使った旧来型の発電設備に加えて、農業用水路などを活用した小水力発電が活発になってきた。全国各地に導入可能な場所は2万以上もある。ただし発電コストが高めで、今後の拡大ペースを左右する。
第3回:「風力発電:2020年代から洋上へ、大型風車1基で10MW級」
水力発電は純国産のエネルギーである。しかもCO2を含めて有害物質を排出しない。日本の狭い国土の中には大小さまざまな河川や用水路が流れているが、発電用に使っているのは一部に過ぎない。それでも大規模なダム式や揚水式の発電所を中心に、国内の電力の1割近くを供給している(図1)。
今後は環境破壊につながるダムを造る方式ではなくて、全国に無数にある既存の水路を生かした水力発電が拡大していく。特に出力が1000kW以下の小水力発電が有望だ。小水力発電は過去10年間に少しずつ増えてきた(図2)。そして2012年7月の固定価格買取制度を機に、全国各地で導入プロジェクトが進んでいる。
固定価格買取制度が始まってから1年半のあいだに、すでに33カ所の水力発電設備が運転を開始した。このほかに69カ所の発電設備が国の認定を受けて、2014年度中に発電を開始する見込みだ。合計して102カ所の設備の発電規模は24万kWになり、年間の発電量は一般家庭で36万世帯分にのぼる。
全国各地には水力発電を導入できる場所が数多く残っている。環境省が2011年に調査した結果では、出力3万kW未満の水力発電設備を導入可能な場所は2万以上にのぼり、すべての設備が発電すると1400万kWにもなる(図3)。大規模な原子力発電の14基分に相当する。
地域別に見ると、特に集中しているのは東北から北陸で、さらに甲信越と中部にまたがる広い一帯に候補地がある(図4)。西日本でも関西・中国から四国・九州までの山間部を中心に有望な地点が数多く分布している。
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