東北の大地を空から探る、地熱資源はどこ?自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2014年08月15日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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重力の測定は難しくない

 3種類の探査手法のうち、比較的容易なのが空中重力偏差法探査だ。ヘリコプターの機内に、図3のような計測装置を搭載し、上空約150mを飛行する(図3)。機体後部にはそれぞれ1対(2個)のレーダー高度計とレーザースキャナーが取り付けてあり、高度・地形情報を取得する。

 これで、微小な重力の変化が分かる。重力の変化は、地下の岩石密度の分布を反映しているため、広い範囲の地質構造を地図にできる。

図3 空中重力偏差法の探査用機器 出典:JOGMEC

地中にある熱水やマグマの位置を探る

 残る2つの探査は機材が複雑だ。国内には測定できる機材がなかったほどだ。約100mの高度を時速70kmで飛行するヘリコプターからループ状のアンテナを地上50mの高さにつり下げて測定する(図4)。実際の測定風景は図2の通りだ。

図4 ヘリや測定機器と地表の位置関係 出典:JOGMEC

 時間領域空中電磁探査では、岩石の電気抵抗の分布を調べる。地熱貯留層上部の帽岩の位置を確認することが目的だ。「粘土や水、硫化物の1種である黄鉄鉱などは電気抵抗が低い」(JOGMEC)。高温の熱水や蒸気を間接的に検出できる。「条件のよい場所では地下500mまで計測できる。垂直方向の位置情報も取得できる。地表に近い部分の電気抵抗が低いと、いくぶん測定しにくいものの、それでも100〜200mまで分かるのではと期待している」(JOGMEC)。

 空中磁気探査では磁束密度の変化を調べる。「地中の岩石は磁場を帯びているが、マグマに接触して高温になるとキュリー点を超えて磁気を失う*2)。従って、間接的にマグマの位置が分かる。もう1つ、鉄鉱物が熱水によって変質を受けると磁気的な性質が変化する。これも上空から分かる」(JOGMEC)。測定精度は0.01nT(ナノテスラ)。これは地磁気の強さの500万分の1という小さな値だ。

*2) 例えば磁鉄鉱のキュリー点は約580度。

日本全国を探査するのか

 JOGMECは地熱資源ポテンシャル調査を2013年10月に開始している。これが今回のようなヘリコプターを用いる3種類の探査手法を導入した国内初の事例だ。最初の対象地域は九州の2カ所。面積約550km2の「くじゅう」(大分県、熊本県)と約280km2の「霧島」(鹿児島県、宮崎県)だ。

 当初の計画では2013年10月中に、東北と同様3種類の調査を終える予定だったが、時間領域空中電磁探査用の装置が海外品であるため、利用の許認可に手間取ってしまう。結局、時間領域空中電磁探査を開始できたのは2014年7月であり、2014年8月中に探査を終える予定だ。

 「空中重力探査では(250m間隔にとった)測線上の5m間隔で測定した。測定点は70万点以上に及び、測定データの総合解析は2014年度いっぱいかかりそうだ。東北の測定が順調に進めば、あわせて2014年内に解析結果を公表したい」(JOGMEC)。

 2015年度以降も、九州、東北に続き、有望な地点のヘリコプター探査をさらに進めていく計画だ。北海道の調査などが期待できそうだ。

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