3年前の台風で運転を停止した小水力発電所、設備を一新して再開へ自然エネルギー

北海道の東部で1952年に運転を開始した町営の小水力発電所がある。2011年9月に来襲した台風の影響で停止状態になっていたが、発電事業者に譲渡して設備を一新することが決まった。発電能力を220kWから260kWに増強して、2016年7月に運転を再開する見通しだ。

» 2014年09月26日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 遠軽町の位置。出典:遠軽町総務部

 北海道東部のオホーツク海に近い内陸に遠軽町(えんがるちょう)がある(図1)。町内を流れる涌別川(ゆうべつがわ)の水流を生かして「白滝(しらたき)水力発電所」が運転を開始したのは、戦後まもない1952年のことだ。地域一帯を電化するために建設された発電所で、2011年9月まで60年近くにわたって運転を続けてきた。

 ところが北海道の東部を襲った台風の影響で洪水が発生して、発電機や制御装置が浸水したために運転を停止する事態に陥ってしまった。遠軽町では資金面の問題などから老朽化した設備を一新することが難しく、3年が経過したところで、小水力発電で実績のある日本工営が事業を引き継ぐことになった。

 日本工営は事業会社の「NK北海道水力発電」を設立して、既存の設備を譲り受けたうえで発電事業を継続する。浸水した水車発電機などは撤去して新しい設備に更新する必要がある。水車発電機は従来の横軸フランシス式から両可動翼プロペラ式に変更して、流量の変化にも対応しやすくする計画だ。発電所の建屋も建て替える(図2)。

図2 既設の発電所建屋(左)と水車発電機(右)。出典:日本工営

 水車発電機を更新することで、発電能力は従来の220kWから260kWへ拡大する。年間の発電量は216万kWhを見込んでいて、一般家庭で600世帯分の電力使用量に相当する規模になる。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は95%に達する想定だ。固定価格買取制度を通じて1kWhあたり29円(税抜き)で売電することにより、年間の売電収入は約6200万円になる。日本工営は収益の一部を遠軽町に還元する。

 更新工事は2015年3月に開始して、2016年7月には新しい設備で運転を再開できる見通しである。水車発電機に加えて水圧管路の鉄管を交換するほか、取水口の一部や放水路の基礎部分も更新する(図3)。小水力発電で課題になる運営費を軽減するために、取水口には自動制水ゲートを設ける予定だ。

図3 現在の堰堤・取水口(左上)、導水路(右上)、水圧管路(左下)、放水路(右下)。出典:日本工営

 日本工営によれば、自治体から民間企業に譲渡した設備で、更新工事を実施して固定価格買取制度の認定を受ける初めての事例になる。現在までに日本工営は栃木県と鹿児島県で小水力発電所を運転していて、さらに白滝発電所を含む5カ所で小水力発電所を建設中である(図4)。

図4 日本工営が運転・建設中の小水力発電所(画像をクリックすると拡大)。出典:日本工営

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