離島でも太陽光と風力を拡大できる、出力変動は2種類の蓄電池で吸収蓄電・発電機器

太陽光と風力による発電設備の出力変動が大きな問題になっているが、島根県の隠岐諸島では2種類の蓄電池を使った実証事業に2015年度から取り組む。4つの島で新たに8MWの発電設備を導入したうえで、1つの島に新設する変電所に合計6.2MWの蓄電池を設置して効果を検証する。

» 2014年10月21日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 隠岐諸島の4島。出典:西ノ島町役場

 中国電力が環境省の補助を受けて、島根県の隠岐諸島で「ハイブリッド蓄電池システムによる技術実証事業」を2015年度から開始する。隠岐諸島は4つの島から成り、このうちの「西ノ島」に変電所を新設する予定だ(図1)。変電所には2種類の蓄電池システムを導入して、太陽光と風力によって生じる大小の出力変動を吸収する試みである。

 実証事業に向けて、4つの島に合計で8MW(メガワット)の発電設備を新たに導入する。面積が最も大きい「島後(とうご)」にある空港の跡地に3MWのメガソーラーを建設するほか、「中ノ島」には2MWの風力発電所を新設することが決まった。既存の発電設備と合わせて太陽光が約7MW、風力が約4MWの合計11MWの構成になる。

 これに対して6.2MWの容量があるハイブリッドの蓄電池システムを西ノ島に導入する計画だ(図2)。西ノ島に新設する変電所に4.2MWのNAS(ナトリウム・硫黄)電池と2MWのリチウムイオン電池の2種類を併設する。隠岐諸島には内燃力(ディーゼルエンジン)による火力発電所や小水力発電所もあり、火力と再生可能エネルギーを組み合わせた電力の安定供給に取り組む。

図2 隠岐諸島で実施する「ハイブリッド蓄電池システムによる技術実証事業」の概要。出典:中国電力

 太陽光や風力には2通りの出力変動がある。1つは太陽光が一時的にさえぎられたり風向が変化したりすることによる小さな変動、もう1つは時間の経過に伴って太陽の位置が移動することによる大きな変動である。このうち小さな変動を大出力のリチウムイオン電池で対応する一方、大きな変動は大容量のNAS電池で吸収する仕組みだ(図3)。特性の違う2種類の蓄電池を組み合わせた出力変動対策は日本で初めての試みになる。

図3 ハイブリッド蓄電池システムによる再生可能エネルギーの出力変動対策。出典:中国電力

 地域内の太陽光発電や風力発電が増加することによって、需要と供給のバランスが不安定になる問題が各地で生じ始めている。特に電力の需要が小さい離島では供給が超過しやすい状況にあるため、沖縄では本島を含めて再生可能エネルギーの発電設備の接続申し込みを8月から制限している。

 このほかに九州が9月25日から、北海道・東北・四国でも10月1日から、同様に発電設備の接続を保留する事態になっている。隠岐諸島の実証事業は2017年度までの3年間をかけて実施する計画で、出力変動の影響が顕著に出る離島の検証結果は全国各地の対策にも生かせる可能性が大きい。

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