3種類の廃棄物をまとめてバイオガスに、2400世帯分の電力に生まれ変わる自然エネルギー

国内初の複合バイオマス発電プロジェクトが愛知県の豊橋市で始まった。市が運営する処理場の中で、生ごみ・下水汚泥・し尿の3種類の廃棄物からバイオガスを生成して発電用の燃料に転換する計画だ。民間企業の資金やノウハウを活用するPFI方式を採用して、2017年10月に運転を開始する。

» 2015年01月07日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 複合バイオマス発電に取り組む場所は、豊橋市の上下水道局が運営する中島処理場である。従来は下水道の汚泥を処理してきたが、新たに生ごみ・し尿を加えて3種類の廃棄物を一括で処理できるようにする(図1)。

図1 複合バイオマス発電の処理の流れ。出典:JFEエンジニアリング

 3種類の廃棄物を混合したうえで、微生物を使ってメタン発酵でバイオガスを生成する方式だ。バイオガスを燃料に利用して1日あたり2万4000kWhの電力を供給することができる。一般家庭で2400世帯分の使用量に相当する規模になる。さらに発酵後の残りかすから炭化燃料を作る設備も合わせて建設する。

 発電設備を含む施設全体の完成予定は2017年9月で、同年10月から20年間にわたってバイオマス発電事業を実施する計画だ(図2)。発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する。メタン発酵でガス化して発電した電力はバイオマスの中では最も高い1kWhあたり39円(税抜き)の価格で20年間の買取が保証される。1年間に365日フル稼働した場合の売電収入は3億円を超える見込みである。

図2 バイオマス資源利活用施設の完成イメージ。出典:豊橋市上下水道局

 この事業は豊橋市の公募で選ばれた民間企業の連合体による「豊橋バイオウェル」が運営する。豊橋バイオウェルはJFEエンジニアリングと鹿島建設グループが合弁で設立した特定目的会社で、豊橋市からPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式の事業を請け負った。

 PFIは国や自治体が公共施設などの建設・運営を民間企業に委託して効率的にサービスを提供する仕組みである。豊橋市と豊橋バイオウェルはPFI方式による総額148億円の事業契約を2014年12月に締結した(図3)。豊橋市は施設の設計・建設と廃棄物処理に伴うサービス対価を支払う一方、豊橋バイオウェルは地代のほかにバイオマスの処理量に応じて施設利用料を市に支払う契約だ。

図3 事業全体のスキーム。出典:豊橋市上下水道局

 バイオガスを利用した発電事業や付帯事業は豊橋バイオウェルが独立採算で運営することができる。この事業スキームを通じて豊橋市は中島処理場の老朽化した設備の更新費や維持管理費を軽減できるほか、市内にある生ごみ・し尿の処理場を更新・維持管理する費用を削減できるメリットがある。

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