火力・原子力・再生可能エネルギーの構成比率を示す「エネルギーミックス」の目標値が2015年内に確定する。震災前に30%近くを占めていた原子力をどこまで復活させるのか。温暖化対策の一環で20%を超える水準まで稼働させる可能性があり、再生可能エネルギーの拡大にも影響を与える。
連載第3回:「電力の自由化でエネルギー産業は激変、ガスと石油を加えて水平連携」
政府が2014年4月に閣議決定した「第4次エネルギー基本計画」には最も重要な数値目標が欠けていた。火力・原子力・再生可能エネルギーの構成比率を示す「エネルギーミックス(電源構成)」である。
2011年に発生した東日本大震災によって、原子力を中核に据えた日本のエネルギー戦略は根底から崩れ去った。とはいえタイムリミットが迫っている。2015年12月にパリで開催する「COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)」の場で、2020年以降の温暖化対策を各国で合意することになっているからだ。
日本全体のCO2排出量のうち、電力によるものが3分の1を超える。COP21までにエネルギーミックスを確定させて、中長期の対策に取り組むことが求められている。
発電に伴うCO2の排出量を削減するためには、原子力か再生可能エネルギーを増やして、火力の比率を減らす必要がある。電源別の発電電力量とCO2排出量の推移を見れば一目瞭然だ。火力の比率が65%を超えた2007年度と2011〜2013年度のCO2排出量が飛び抜けて高い(図1)。
ただし震災前のように原子力の比率を30%程度まで高めることは、もはや非現実的と言える。2010年度には原子力の比率が28.6%あったが、2012年度には関西電力の大飯発電所の2基だけが稼働して1.7%まで低下した(図2)。それでも電力は十分に供給できている。
政府は第4次エネルギー基本計画の中で「震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する」と宣言した。その宣言を守るならば、原子力の比率が30%を超えるようなエネルギーミックスは作れない。
震災前の2010年に策定した第3次エネルギー基本計画は温暖化対策を重視する内容になっていた。CO2を排出しない原子力と再生可能エネルギーで発電電力量の70%以上を供給することが目標だった(図3)。原子力だけで50%を超える。今から考えると恐ろしい状況だが、当時は放射能汚染のリスクを過小に評価していたわけだ。
とはいえ日本全体の発電設備は2007年度のころと比べても、LNG(液化天然ガス)による火力と再生可能エネルギーが増えたほかに大きな変化はない。発電設備の構成比率は短期間に変えることができないため、取捨選択が必要になってくる。原子力の稼働をどの程度に抑えて、再生可能エネルギーをどこまで伸ばせるかが焦点になる。
すでに老朽化した原子力発電所の廃炉を進めるための施策は進み始めている。新たに設定するエネルギーミックスでは、原子力発電所のうち全体の2分の1から3分の2の範囲で再稼働させる目標設定が濃厚だ。その場合には発電電力量の比率が20%前後になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.