南国の特産品でバイオマス発電、サツマイモから鶏糞まで燃料にエネルギー列島2014年版(45)宮崎(2/2 ページ)

» 2015年03月03日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

バイオマス発電が森林資源にも広がる

 川南町内では地域の森林で発生する間伐材などを利用した木質バイオマス発電のプロジェクトも始まった。地元の民間企業や森林組合などが参画して推進する「宮崎森林発電所」である(図4)。環境省が推進する「地域低炭素投資促進ファンド事業」の出資案件の1つで、宮崎県と川南町も補助金を交付して支援している。

図4 「宮崎森林発電所」の事業スキーム。出典:グリーンファイナンス推進機構

 発電所みずからで間伐材の物流体制を構築して、燃料の木質バイオマスを安定的に確保する計画である。発電設備の能力は5.75MWを予定していて、建設にかかる事業費は35億円を見込んでいる。運転開始時期は決まっていないが、住友重機械工業が木質バイオマスに適した発電設備を供給する。

 これと同じ規模の木質バイオマス発電所は、隣接する都農町(つのちょう)で2015年2月に運転を開始している(図5)。5.75MWの発電能力で年間に4000万kWhの電力を供給することができる。1万1000世帯分の使用量に相当する電力で、都農町の総世帯数(約4000世帯)の3倍近い規模になる。

図5 「グリーンバイオマスファクトリー都農発電所」の全景(上)、事業スキーム(下)。出典:住友重機械工業、グリーンバイオマスファクトリー

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて九州電力に売電する予定だ。地域の間伐材などを利用することから、未利用材によるバイオマス発電の買取価格(1kWhあたり32円、税抜き)を適用して年間の売電収入は12億8000万円になる。燃料に使う未利用材の量は年間に7万2000トンを想定している。発電所の構内には木材を粉砕して燃料用のチップに加工する施設も整備した。

 県南部の日南市でも、製紙会社の王子グループが工場の構内に大規模な木質バイオマス発電所を建設中だ。25MWの発電能力で2015年3月に運転を開始する予定になっている。年間の発電量は1億5000万kWhに達して、4万世帯分を超える。日南市の総世帯数(約2万3000世帯)を大幅に上回る規模の電力をバイオマスで供給できるようになる。

 これまで宮崎県の再生可能エネルギーは太陽光と水力発電の導入量が大半を占めてきた(図6)。今後は地域の資源を活用したバイオマス発電が急速に拡大していく見通しだ。太陽光・水力・バイオマスの3本柱で展開していけば、再生可能エネルギーによる自給率が100%に近づく日も遠くない。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −九州編 Part2−」をダウンロード

2016年版(45)宮崎:「太陽・風・水・地熱・森林に恵まれた南国に、CO2フリーの電力が広がる」

2015年版(45)宮崎:「九州一の森林県にバイオマス発電所が続々誕生、太陽光で水素も作る」

2013年版(45)宮崎:「降水量が日本一の県で水力を再生、古い発電所とダムの増改築に着手」

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.