再生可能エネルギーの導入量に制限がかかった九州にあって、鹿児島県では早くから蓄電池を使って電力の安定化を図るスマートグリッドの実証試験に取り組んできた。天候の影響を受けて出力が変動する太陽光と風力を蓄電池と連携させながら、安定した出力の水力と地熱を拡大していく。
鹿児島県は高温で多雨の亜熱帯に近い気候が特徴だ。豊富な降水量を生かして、水力発電の開発が古くから進んできた。世界自然遺産にもなっている屋久島が典型例で、島内の電力の大半を水力発電で供給している。九州電力が鹿児島県の本土で運転する発電所を見ても、薩摩川内市(さつませんだいし)に火力と原子力がある以外には、地熱が2カ所、風力が1カ所で、残りはすべて水力である(図1)。
最近でも水力発電所の新設が相次いでいる。その中で注目すべきプロジェクトの1つは、県北部の伊佐市で106年前の1909年に運転を開始した「曽木(そぎ)発電所」の設備を生かした小水力発電である。2013年に稼働した「新曽木発電所」は滝の右岸にある旧・発電所の取水口を改造して、古い水圧管路の先に新しい水車発電機を設置して実現した(図2)。
発電機までの水流の落差は13メートルあって、最大490kWの電力を供給することができる。年間の発電量は400万kWhになり、一般家庭の1100世帯分に相当する。川から常に安定した水量を確保できるため、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は93%と極めて高い。
同様に滝が流れる地形を利用した小水力発電所は県中部の姶良市(あいらし)でも建設中だ。九州電力グループが手がける「龍門滝(りゅうもんだき)発電所」で、滝の近くを流れる農業用水路に沿って発電設備を造成する。用水路から取り込んだ水を水槽に貯めて、そこから低い位置に設けた発電機まで水圧管路で水を流し込む(図3)。
発電能力は140kWで、年間の発電量は110万kWhを想定している。一般家庭で300世帯分の電力を供給することができる。この小水力発電所の設備利用率も90%に達する。運転開始は2015年6月を予定している。
鹿児島県では水力のほかに太陽光と風力、さらに地熱の導入量も全国のトップクラスを誇る(図4)。地熱発電所は薩摩半島の南端にある指宿市(いぶすきし)に集中している。九州電力の「山川発電所」が1995年から運転を続けているほか、市内の温泉施設で1.5MWの地熱発電設備が2015年2月に運転を開始したところだ。このほかにも低温の温泉水で発電できるバイナリー方式のプロジェクトが進行中である。
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