2030年に再生可能エネルギー33%へ、原子力にこだわらない環境省の予測自然エネルギー(1/2 ページ)

CO2排出量の削減を重視する環境省が再生可能エネルギーの将来予測をまとめた。現行の施策に加えて合理的な対策を実施することにより、2030年には国内の発電電力量の33%を再生可能エネルギーで供給できる想定だ。経済産業省が検討中のエネルギーミックスよりも意欲的な拡大を見込む。

» 2015年04月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 環境省は2050年までの再生可能エネルギーの規模を見極めるために、シンクタンクの三菱総合研究所に委託して将来の導入見込量を推定した。地球温暖化対策のために再生可能エネルギーを最大限に導入することを前提にしている。経済産業省が原子力を優先してエネルギーミックス(電源構成)を検討する手法と根本的に異なる。

 環境省の手法は再生可能エネルギーに対する施策の力の入れ具合によって、低位・中位・高位の3通りで導入可能量を予測する。平均的な中位の予測では、従来の施策だけを実施する低位の状況に加えて、CO2排出量を削減するための合理的な対策を実施した場合を想定している。その結果、2030年には再生可能エネルギーで3122億kWh(キロワット時)の電力を供給することができる(図1)。

図1 再生可能エネルギーによる発電電力量の予測(グラフをクリックすると拡大)。出典:環境省

 エネルギーの種別では、発電設備が急増する太陽光が最も多くて1173億kWhに拡大する。次いで水力が既存の大規模と新規の中小規模を合わせて863億kWh、風力が537億kWhまで伸びる。さらにバイオマスと地熱、海洋エネルギーによる発電量も2030年までに大幅に増える見込みだ。

 火力や原子力を含めた国内の発電電力量は2013年度の実績で9397億kWhだった。今後は節電対策の進展などによって電力の需要が減っていく見通しだが、仮に2030年の発電電力量が2013年度と同じ水準だったとしても、再生可能エネルギーで33%を占めることになる。需要の減少を想定すれば、35%以上に拡大できる可能性も大いにある。

 発電設備の容量を見ると、2030年(中位の場合)には再生可能エネルギー全体で1億6491万kWに達する(図2)。原子力発電設備の容量を1基あたり100万kWとして、実に165基分に相当する規模になる。とはいえ全体の6割を太陽光が占めるため、実際の発電電力量は原子力と比べて3分の1程度にとどまる。それでも2030年には国内の原子力発電所をすべて稼働させた場合と同等以上の発電電力量を見込むことができる。

図2 再生可能エネルギーによる発電設備容量の予測(グラフをクリックすると拡大)。出典:環境省

 環境省の予測手法は固定価格買取制度が2030年まで続くことを前提に、発電システムのコストと収益率の推移をもとに導入見込量を推定している。太陽光や風力に対しては、地域の供給量が需要を上回る場合に実施する出力抑制の影響も織り込んだ。ただし地域を越えて需給調整を図るなど、可能な限りの回避策をとった場合の予測値である。

 固定価格買取制度の買取価格のうち、太陽光は2030年に向けて徐々に低下していく想定だ(図3)。火力を中心にした発電コスト(回避可能原価)は2014年の時点で電力1kWhあたり13円程度だが、2030年までには太陽光も同じ水準まで下がる見通しである。太陽光で発電しても火力で発電してもコストは変わらず、現在のように国民が発電コストの差額を負担しなくて済む状態に近づいていく。

図3 太陽光発電の買取価格(中位の場合)と回避可能原価(従来の発電設備による発電コスト)の予測。出典:環境省

 環境省が再生可能エネルギーの導入量を予測するにあたっては、原子力の利用を前提にしていない。実際に電力会社が出力抑制を実施する場合には原子力の稼働が見込まれているため、その点で原子力の影響を受けるだけである。

 経済産業省が検討中のエネルギーミックスでは2030年に原子力を20%程度、再生可能エネルギーを25%程度に拡大する案が有力になっている。環境省が再生可能エネルギーで30%以上を可能としている予測との違いは、ひとえに原子力の再稼働を優先するかどうかにある。

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