2020年に1550億円まで成長、拡大する国内バイオマス電力市場自然エネルギー(1/2 ページ)

市場調査会社の富士経済がバイオマス利活用市場の調査結果を発表した。2012年7月に固定買取価格制度が開始されて以降、バイオマス発電プラントの市場規模は急速に拡大した。バイオマス由来電力の市場は2020年に1550億円にまで成長する見通しだ。

» 2015年04月17日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 市場調査会社の富士経済はバイオマス発電プラントをはじめバイオマス利活用装置、バイオマス由来電力、バイオエタノール由来製品などバイオマス利活用市場の調査結果を発表した。

 バイオマス発電は2012年7月にスタートした再生可能エネルギー固定買取制度(FIT)によって売電収入を得られるようになったため、これまで採算面が課題となっていた林地残材や間伐材、草本類などの活用が進んだ。その結果、5M〜数十MW(メガワット)規模の大規模発電プラントの数が急拡大した。2013年度におけるバイオマス直接燃焼ボイラ、バイオガス化(メタン発酵)、およびバイオマスガス化の3種類のバイオマス発電プラントを合計した受注ベースの市場規模は、国内および日系企業の海外実績を加えると約1000億円近い規模となった(図1)。

図1 バイオマス発電プラント市場の推移 出典:富士経済

 この市場規模は2012年度の約2倍、2011年度と比較すると約5倍である。ただ2014年度については、FITによる発電プラント需要は大規模案件が一巡したことで市場に陰りが見え始めており、市場規模も約600億円程度に落ち着いている。2015年度ついては、FITにおける間伐材などを利用する木質バイオマス発電の買取価格に、2MW未満という区分が新しく設定された。この新区分は買取価格がこれまでより高い税抜き40円となる予定のため、中小規模案件への追い風になると見られている。

 発電プラントの中でもバイオマス直接燃焼ボイラについての市場規模は、長期的にみると東南アジア地域の大規模案件の獲得も期待できるため、2020年度には400億円程度にまで拡大するという予測だ。食品廃棄物や下水汚泥などを発酵させ、発生するメタンガス(バイオガス)を燃料として発電するバイオガス化については、需要地がメタンガスを発生させるために必要な原材料の確保が容易な場所になりやすい。

 そのため既に設備が導入されているケースも多いが、FITの開始で売電収入により投資回収が行いやすくなった。このため、小規模案件や原料の収集コストが必要となる案件にも市場のすそ野が広がってきた。

 バイオマスガス化はバイオマス原料を高温で熱分解して生成した合成ガスを燃料に利用して発電する方法だ。直接燃焼よりも発電効率が良いことや小規模でも高効率であるため、活用可能なバイオマス原料が少ない地域でも導入しやすいメリットがある。しかし、イニシャルコストが高いことから2012〜2013年度については実績が無く、2014年度になってFITを活用した案件が成立し始めている。

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