笑うパワコン、泣くパネル、太陽光発電各社の決算動向太陽光(1/3 ページ)

企業各社の2014年度(2015年3月期)決算が出そろったが、太陽電池メーカーは苦境が目立つようだ。2014年度決算資料などから太陽光発電関連企業の2014年度の動向と2015年度(2016年3月期)の取り組みについてまとめた。

» 2015年06月02日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 太陽光発電協会によると2014年度の国内太陽電池モジュールの総出荷量は987万kWで前年度比14%増を記録した。ただ、前年度比2.2倍となった2013年度に比べてその伸長率は小さくなっている。日本企業だけの出荷量は676万kWで同12%増と全体の数字よりも伸び率は低い。さらに、販売価格の低下が進んでおり、総出荷金額は前年を割り込んだとも見られている(図1)。

photo 図1:日本における太陽電池モジュールの出荷量(上図)と日本企業の出荷量(下図)(クリックで拡大)※出典:太陽光発電協会

 日系の太陽電池メーカーはこうした厳しい環境の影響を受け、2014年度は減益減収傾向となり、全体的に苦戦した1年となったといえる。一方で、太陽光発電システムの施工件数は伸びていることから、システムを構成するパワーコンディショナなど関連製品の動きは好調に推移している。今後、太陽電池メーカーでは、太陽光発電システムを核に蓄電池などを組み合わせてシステム全体の価格を引き上げる取り組みを強化し、この難局を乗り切る構えだ。15年3月期の決算資料などから太陽光発電システム関連企業の14年度の実績と15年度の見通しや取り組みをまとめた。

国内では構造改革、海外で成長を目指すシャープ

 太陽電池メーカーの動向をみると、シャープの15年3月期の太陽電池の売上高は産業用が急激に減少したことからエネルギーソリューション部門全体で前年比38.3%減の2708億円と落ち込み、営業利益は50億円の赤字となった。同社では「太陽電池は国内産業用需要の低迷が続くものの、引き続きエネルギー関連市場のポテンシャルは大きい」と判断しており、2015年度以降は、既存パネル事業の構造改革を進めるとともに、ソリューション事業と海外事業の拡大を図り、巻き返しを目指す方針を示す。

 国内ではソーラーと蓄電池をベースとしてHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)・省エネ家電・エコキュートなどをクラウドでつないだソリューションを提案していく。海外ではそれぞれの地域に合わせたエネルギーソリューション事業を展開。アジアではEPC(設計・調達・建設)事業やディーゼル発電器を組み合わせたPV-ディーゼルハイブリッド事業、米国ではピークカットシステム、欧州では太陽熱を活用するPV-T(サーマル)システムの展開を強化していく。

 これらの取り組みで2017年度には海外事業比率を約3割へ拡大する他、ソリューション比率を約5割に引き上げる計画だ。また営業利益についても「ソリューション事業への転換と、構造改革や固定費削減の効果により、売上高減少による粗利減をカバーし2015年度は50億円の黒字を見込む」(同社)と意欲を見せる。

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