竹中工務店はNEDOプロジェクトで共同開発したCO2排出量を削減できるECM(エネルギー・CO2・ミニマム)セメントを、国内の建造物に初適用したと発表した。一般的なコンクリートを使用する場合と比較して約6割のCO2削減効果が見込めるという。
日本国内で排出されるCO2のうち、約3%強はセメントの製造に由来している。こうした状況の改善を目指して竹中工務店は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトを通じてCO2排出量を削減できるECM(エネルギー・CO2・ミニマム)セメントを共同開発し、さらに日本で初めて建造物に適用したと発表した。
ECMセメントは鉄鋼製造の副産物である高炉スラグを大量に混合したセメントだ。コンクリートの主要な材料であるセメントは、製造時に石灰石などの原料を高熱で焼成するため多くのエネルギーを必要とし、大量のCO2が発生する。ECMセメントは、セメントの6〜7割を高炉スラグの微粉末に置き換えることで、材料製造時のエネルギー消費量とCO2排出量を大幅に削減できる。
従来、高炉スラグの微粉末の含有率を高めると、生コンクリートの流動性が運搬中に低下しやすく、さらに強度の発現が遅いなどの課題があった。そこで竹中工務店はNEDOプロジェクトにおいて、新たな混和剤の開発や材料成分・構成の最適化などによりこうした課題を解決し、環境負荷のさらなる低減と品質確保の両立を可能にした。
今回竹中工務店がECMセメントを使用したのは、大阪市中央区で建設中の「大阪府立成人病センター」(2016年11月に完成予定)。このプロジェクトでECMセメントを用いたことにより、一般的なポルトランドセメントを用いるコンクリートを使用する場合と比較して、削減率6割となる約146トンのCO2削減を実現したという(図1)。
なお竹中工務店はECMコンクリートの実用化に当たり、高炉スラグ微粉末を高含有する結合材を用いた低発熱・低環境負荷コンクリート工法として日本建築総合研究所による建築技術認証を取得している。現時点でECMセメントの使用範囲は基礎構造部の一部などに限られるが、同社は今後、建物そのものにも使用できるよう性能改善を進めていく方針だ。
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