通勤電車で省エネ40%、回生電力を増やして消費電力を減らす省エネ機器

首都圏を走る小田急電鉄の通勤用車両に高効率の電力変換装置を搭載したところ、従来の車両と比べて電力の消費量を40%も削減できた。装置を構成する半導体の素材にSiC(炭化ケイ素)を全面的に採用したことで、直流から交流へ変換する時に生じる電力の損失が少なくなった。

» 2015年06月24日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 小田急電鉄の「1000形」リニューアル車。出典:三菱電機

 小田急電鉄は通勤用の車両に利用する「1000形」のリニューアル車を開発して、2015年1月から営業運転に利用している(図1)。導入後の約4カ月間にわたって電力の使用状況を実測した結果、従来の車両と比べて約40%の省エネ効果を発揮することが検証できた。

 このリニューアル車には三菱電機が開発した「フルSiC適用VVVFインバーター装置」を搭載して、電力の利用効率を高めた点が特徴だ(図2)。インバーターは電車のモーターを駆動するために、架線から受け取った直流の電力を交流へ変換する装置である。

図2 リニューアル車に搭載した「フルSiC適用VVVFインバーター装置」。出典:三菱電機

 インバーターを構成する半導体の素材にSiC(炭化ケイ素)を採用したことで、従来のSi(ケイ素)を使った場合と比べて変換時に生じる電力の損失が小さくなる。加えて電車のブレーキ時に発生する回生電力の損失も低減できて、利用できる電力量が増加する効果も大きい(図3)。

図3 「SiC適用インバーター」による回生電力の増加。出典:三菱電機

 1月中旬から5月上旬の約4カ月間に営業運転を続けながら実測した結果では、加速時の電力消費量が平均で約17%少なくなった。一方で減速時に発生する回生電力が増えることによって、電車が架線から受け取った電力を架線に戻せる割合は34%から52%へ改善した。両方を合わせると、実際に消費する電力量は約40%少なくて済む。

 小田急電鉄は8両編成の2編成分を1000形のリニューアル車に改良して、通勤時の営業運転に利用している。今後は合計160両の1000形を順次リニューアルする計画で、朝と夕方の通勤時の電力消費量が大幅に減っていく見通しだ。

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