低コスト、高効率な「ペロブスカイト太陽電池」、実用化に向け安定生成技術を開発太陽光(1/2 ページ)

物質・材料研究機構は、次世代太陽電池として期待を集めるペロブスカイト太陽電池を低温・溶液プロセスで作成することに成功した。

» 2015年07月03日 15時00分 公開
[三島一孝ITmedia]

 太陽電池は再生可能エネルギーとして大きな注目を集める一方で、現在のシリコン素材が中心のものはコストが高くなる。そのため従来技術の壁を突破する次世代太陽電池素材の模索が進んでいる。

 ハロゲン化鉛系ペロブスカイト(以下、ペロブスカイト)もその素材の1つだ。ペロブスカイトは結晶構造の一種で、ペロブスカイト(灰チタン石)と同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。ぺロブスカイト太陽電池ではヨウ化鉛メチルアンモニウム(CH3NH3PbI3、もしくはCH3NH3PbI3-xClx)をペロブスカイト層として用いる。結晶構造では、Bサイトに鉛(Pb2+、Xサイトにヨウ素(I-)、Aサイトにメチルアンモニウム(CH3NH3+)が規則構造を形成している(図1、図2)。

photo 図1:ペロブスカイト構造 ※出典:物質・材料研究機構
photo 図2:ヨウ化鉛メチルアンモニウムの結晶構造 ※出典:物質・材料研究機構

安価で高い効率を実現できるポテンシャル

 ペロブスカイトを利用した太陽電池は安価な方法で作成できること、500ナノメートルの厚みでほぼ100%の光を吸収できること、1ボルト程度の高い開放電圧が得られることなどが評価され、次世代太陽電池として研究開発が進んでいる。

 一方で、高い光電変換効率が得られるものの、データのばらつきが大きく再現性が低いという課題を抱えている。また、ペロブスカイト太陽電池では電圧掃引方向によって得られる光電変換効率が異なる現象(ヒステリシス)が観測されると指摘され、これまで報告されている高い変換効率の信頼性にも疑問点があった。さらに数回の測定で素子が劣化するなど耐久性に問題がある事も多く、ペロブスカイト材料自体の半導体としての電気特性を正確に評価できていなかった。

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