火力発電のCO2排出量、2020年度に700万トン削減へ:法制度・規制(2/2 ページ)
電力会社10社のCO2排出量は2014年度に2700万トンも少なくなった。最大の理由は販売電力量が減少したことだが、電力1kWh(キロワット時)あたりの排出係数も2.5%ほど低下して改善が見られる(図2)。
図2 電力会社10社の販売電力量とCO2排出実績(画像をクリックすると拡大して注釈も表示)。出典:電気事業連合会
2014年度には火力発電が縮小する一方で、水力を中心に再生可能エネルギーの発電量が増加した効果が大きい(図3)。わずか1年間で再生可能エネルギーの比率が全体の10.7%から12.2%へ上昇した。
図3 電源別の年間発電量と構成比率。出典:電気事業連合会
2015年度以降は再生可能エネルギーと原子力の比率が増えることに加えて、火力発電の効率が上がっていく。CO2排出量の削減は着実に進む見通しだが、政府が2030年に設定した目標では電力によるCO2排出量は3億6000万トンまで低減させなくてはならない。2014年度の4億5700万トンからは20%以上の削減が必要になる。その多くを占める火力発電の排出量を削減する取り組みは現状では不十分で、追加の施策も求められる。
- 電力会社のCO2排出量が2014年度に減少、再生可能エネルギーと火力発電の高効率化
日本のCO2排出量の約4割は火力発電による。東日本大震災後に急増したCO2排出量が徐々に減ってきた。電力会社のうち8社が発表した2014年度の実績では、CO2排出量の最も多い東京電力が前年度比8%の減少になったほか、沖縄電力を除く7社で前年度を下回っている。
- 火力発電の効率改善は待ったなし、電力会社はCO2排出量を3割低減へ
国が2030年の温室効果ガスの削減目標を決定したことを受けて、電力業界が火力発電の効率改善に取り組む姿勢を打ち出した。電力会社のCO2排出係数が0.50を超える現状に対して、2030年度に業界全体で0.37まで引き下げる。高効率化に加えて、老朽化した設備の廃止・更新が急務だ。
- 次世代の発電効率は3割アップ、燃料費とCO2を減らす
15年後の2030年になっても、日本の電力の半分以上は火力発電に依存する。燃料費とCO2排出量を削減するためには、発電効率を引き上げるしかない。日本が世界に誇る石炭火力とLNG火力の最新技術を進化させれば、2030年までに現在の発電効率を3割以上も高めることが可能だ。
- 石炭火力発電の新設計画が進まない、いつまで続ける政府内の意思不統一
老朽化した石油火力から高効率の石炭火力へ更新しようとする計画に対して環境省が異議を唱えた。CO2排出量の削減に向けた電力業界の取り組みが不十分であることを理由に、計画は認められないと経済産業省に伝えた。本来はCO2排出量の削減に寄与する発電設備の新設計画が停滞する。
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