吉野地方には和歌山県を通って太平洋につながる吉野川が流れている。川の流域には電力会社の水力発電所が数多く稼働する一方、豊富な水を農業用水路の「吉野川分水」に流して土地を潤してきた。その一部の区間を利用して、「吉野川分水かつらぎ発電所」が2015年3月に運転を開始している(図3)。
この発電所は用水路の上部に太陽光パネルを並べたもので、発電能力は83kWである。年間の発電量は8万kWhを見込んでいて、22世帯分に相当する。約300万円の売電収入を用水路の維持管理費の軽減に役立てる方針だ。東吉野村の小水力発電と同様に、エネルギーの地産地消を通じて地域を活性化させる狙いがある。
農業用の施設では、ため池でも太陽光発電が始まっている。奈良県の北部に弥生時代から農業が始まっていたことを示す遺跡が残っていて、その一角に「ヒライ池」と呼ぶ大きなため池がある。ため池の水面に4500枚の太陽光パネルを浮かべて、水上のメガソーラーが7月に発電を開始した(図4)。
発電能力は1MW(メガワット)を少し上回る。太陽光パネルは水面に浮かぶフロートの上に設置した。このフロートは兵庫県や島根県のため池で稼働中のメガソーラーでも使われている。軽量で腐食にも強い高密度ポリエチレンを素材にした水陸両用の架台だ。
同じ天理市内では、奈良県で最大のメガソーラーの建設工事も進んでいる。天理市が開発した工業団地に残る遊休地を活用したプロジェクトである(図5)。43万平方メートルの広大な敷地に9万枚の太陽光パネルを設置する計画だ。発電能力は23MWに達する。
年間に2500万kWhの電力を供給できる見込みで、一般家庭の6900世帯分に相当する。天理市の総世帯数(3万世帯)のうち2割以上をカバーすることができる。オリックスと九電工の共同事業として、2017年1月に運転を開始する予定だ。天理市には土地の賃借料が20年間にわたって毎年4300万円ずつ入る。
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