東京ガスが早くも電気料金の値下げに踏み切った背景には東京電力の新プランがある。東京電力は1月7日に4種類の料金プランを発表した。いずれも月間の使用量が多い家庭を対象にしている。その中でも目を引くのが「プレミアムプラン」である(図3)。スマートメーターを使って基本料金も変動させる新しい体系を採用した。
このプレミアムプランの電力量料金の単価を見ると、東京ガスが当初発表した「ずっとも電気1」より安くなっている。使用量が400kWhまでは定額で、1kWhあたりに換算すると24.25円である。「ずっとも電気1」の350kWh以下の単価と比べると1円ほど高いものの、350kWh超では5円近く安い単価を設定した。
さらに400kWh超の単価は29.04円で、従来の「ずっとも電気1」の29.12円をわずかに下回る。両者の電力量料金を400kWhで比較すると、プレミアムプランが9700円に対して、「ずっとも電気1」は9726円で割高だった。新料金で計算すると「ずっとも電気1」は9475円になって、プレミアムプランよりも月間で200円以上安くなる。使用量が680kWhあたりで両者の電力量料金は同じ水準になる。
ただし電気料金だけの競争では終わらない。東京ガスが電力とガスのセット割引を前面に打ち出したのに対抗して、東京電力はソフトバンクと組んで電力と携帯電話・通信のセット割引で攻勢をかけている。ソフトバンクは東京電力の「プレミアムプラン」のほかに独自に「バリュープラン」を用意して、電力の使用量が400kWh以下の家庭でも割引額を大きく設定した(図4)。
月間の使用量が392kWhのモデルケース(戸建て住宅、3人家族)では、バリュープランを適用すると東京電力の従量電灯Bと比べて1カ月あたり500円安くなる。さらに携帯電話・通信のセット割引(月額200円)を加えると月間で700円、年間では8400円の割引額になる。
対する東京ガスの「ずっとも電気1」も電気料金を引き下げたことで同等の割引額になる。使用量が392kWhのモデルケースで従来はガスとセット割引でも年間に4800円の割引額だった。新料金では8500円に拡大して、ソフトバンクのバリュープランの割引額をわずかながら上回る(図5)。
加えてソフトバンクがバリュープランのモデルケースの家庭に年間で500円相当のポイントを付与するのに対抗して、東京ガスは独自の「パッチョポイント」で年間に1500円相当を付与する新プログラムを追加した。どちらも電力の使用量に応じてポイントを付与する仕組みだ。
こうして電力市場に新規参入する各社が料金とサービスの両面で激しい競争を繰り広げていく。東京ガスが口火を切ったことで、4月1日の全面自由化までに料金を引き下げる動きが活発になることは確実だ。東京電力の管内から始まって、市場規模が大きい関西・中部へ競争状態は波及する。
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