首都圏は小売全面自由化で新たに開放される家庭・商用向け低圧市場の中で、最も激しい事業者間の競争が予想される。その中で現在最大の顧客を抱え、“守る立場”にいるのが東京電力だ。その同社がついに電力料金プランの概要を発表した。
連載:「電気料金の新プラン検証シリーズ」
2016年4月からはじまる電力の小売全面自由化に向け、ついに東京電力が新たな料金プランを発表した。小売全面自由化後の最大市場となる首都圏に対し、他の新規参入事業者から既存顧客を“守る”立場にある東京電力はどのような戦略で挑むのか。以下では発表された主な新しい料金プランについて紹介していく。
これまでの東京電力の一般的な家庭向けの料金プランである「従来電灯B/C」に相当する新料金プランが「スタンダードプラン」だ。S、L、Xの3つのプランを用意した。プランSとプランLがこれまでの従来電灯BとCに相当するものだ。契約の大きさが10〜60Aの場合はプランS、60A以上の場合はプランLを推奨するという料金区分も、従来電灯B/Cと同じである。なお、プランXはスマートメータを活用した新しいプランで、これについては後述する。
新たなスタンダードプランが従来電灯B/Cから最も大きく変わったのは、料金体系が2段階制に変わった点だ。契約アンペア数に応じた基本料金と(従来電灯Cおよび新プランLの基本料金は1種類のみ)、使用量分の電力料金を支払う仕組みはこれまでと変わらない。しかしこれまでの従来電灯B/Cでは1kWh当たりの使用電力単価を「120kWh(キロワット時)まで」「120〜300kWh」「それ以上」というように、使用量に応じて3段階の料金を設定していた。各段階での単価は従来電灯B/Cのどちらも、それぞれ19.43円、25.91円、29.93円だ(図2)。
新しいスタンダードプランS/Lでは、この3段階制が「最初の300kWhまで」「それ以上」の2段階に変更された。ただし料金単価についてはS/Lのどちらも300kWhまでが23.4円、それ以上が30.02円となっている。基本料金についてはプランS/Lともに従来電灯B/Cと一緒だ。
では結局のところ、新料金プランS/Lと従来電灯B/Cはどちらに切り替えた方がお得なのか。基本料金は従来電灯B/Cも新プランS/Lも同じなので、ここでは考慮せずに使用電力量だけで簡単に計算してみる。従来電灯Bの場合、120kWhまで19.43円、プランSは300kWhまで23.4円なので、当然ながら使用量が120kWhまでなら従来電灯Bのほうが安い。月の使用電力が300kWhの場合、従来電灯Bは6995.4円、プランSの場合は7020円、400kWhだとそれぞれ9988.4円と1万22円だ。
この結果“だけ”を見ると、新プランの方がわずかに高いことになってしまう。ほぼ変わらないと思うユーザーも多いだろう。基本料金もこれまでと同じであり、新プランになっても電力単価そのものが安くなっているというわけではない。料金体系を分かりやすくするための2段階料金制といえる。そして東京電力は2016年4月以降も、従来電灯B/Cをはじめとするこれまでのプランも一部継続して提供していく。では一体何のための新プランなのか。ここで鍵を握るのが、新プランに適用される「ポイントサービス」と「セット割」だ。
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