風力発電の導入量が全国1位、日本最大のメガソーラーも動き出すエネルギー列島2016年版(2)青森(1/4 ページ)

青森県ではエネルギーの自給率と利用効率を高めて化石燃料の依存率を引き下げる「トリプル50」を推進中だ。風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーの発電量を2030年度までに5倍に増やす。巨大な風力発電所とメガソーラーが運転を開始して、電力から水素を製造するプロジェクトも始まる。

» 2016年04月12日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 冬の寒さが厳しい青森県の光熱費は全国一の水準だ。都道府県庁所在地と政令指定都市を合わせた52都市を比較すると、青森市は1世帯あたりの光熱費に年間で約30万円もかかってトップである。そのうち灯油代が35%を占めて比率でも1位だが、一方で電気代の比率は51%で49位、ガス代は14%で最下位の52位まで下がる。

 こうした石油中心のエネルギー消費構造を改善するために、青森県は2030年度に「トリプル50(フィフティ)」の達成を目標に掲げている。トリプル50は持続型の社会に必要なエネルギーの需給構造を表す指標で、エネルギー自給率・エネルギー利用効率・化石燃料依存率の3つを50%の水準まで改善することを目指す(図1)。

図1 青森県が2030年度に目指すエネルギー消費構造。出典:青森県エネルギー総合対策局

 そのためには地域の資源や立地を生かしたエネルギー産業を拡大する必要がある。すでに県内の再生可能エネルギーによる発電量は2014年度で12億7000万kWh(キロワット時)に達している。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して35万世帯分に匹敵する規模で、青森県の総世帯数(51万世帯)の7割に相当する。

 現在でも家庭の電力需要の大半を満たせる発電量があるが、さらに2020年度までに3倍以上に増やし、2030年度には5倍以上に拡大する計画だ(図2)。県内の需要を大幅に超える電力を再生可能エネルギーで生み出して、トリプル50を達成するだけではなく国のエネルギー供給基地としての役割を高めていく。

図2 再生可能エネルギーの導入目標(発電量ベース)。kWh:キロワット時。kl:キロリットル(原油換算)。出典:青森県エネルギー総合対策局

 その中で最も多くの電力を供給するのは風力である。2014年度の時点で再生可能エネルギーの電力のうち半分以上を風力が占めている。風力発電の導入量は全国の都道府県の中で第1位だ(図3)。同じように風況に恵まれていて広大な土地を抱える北海道さえも上回る。

図3 都道府県別の風力発電の導入量(2015年3月末、画像をクリックすると拡大)。出典:青森県エネルギー総合対策局(NEDOの資料をもとに作成)
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