風力発電では沖合20キロメートルの洋上で進む「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」に注目が集まる。震災後の2011年度から5年計画で始まったプロジェクトだが、2016年度も継続することになった。洋上に3基の発電設備と1基の変電設備を浮体式で建設して、海底ケーブルで陸上まで送電する壮大な計画だ。イノベーション・コースト構想のシンボルでもある。
発電設備のうち最も大きい「ふくしま新風」は風車の最高到達点が188メートルに達する。世界で最大の浮体式による洋上風力発電設備である。風車の回転直径は167メートルになり、最高7MWの電力を供給できる(図8)。2015年12月に試運転を開始して。まもなく実証運転に入る予定だ。
洋上風力の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を30%で計算すると、年間の発電量は1800万kWhにのぼる。一般家庭で5000世帯分の電力になる。発電した電力は2キロメートルほど離れた洋上にある変電設備の「ふくしま絆」に送ってから、海底ケーブルで広野町まで送電する(図9)。
もう1つの発電設備「ふくしま未来」は2013年11月から洋上で運転を続けている。風車の回転直径は「ふくしま新風」と比べて半分以下の80メートルで、発電能力は2MWである。これまでのところ設備利用率30%以上を維持して電力を供給中だ。
3番目の発電設備「ふくしま浜風」は開発が遅れていたが、ようやく2016年7月に設置作業を開始できる状況になった(図10)。発電能力5MWで12月までに運転を開始する見込みだ。合計3基の発電設備がそろうと、洋上から1万世帯分の電力を供給できるようになる。
浮体式の洋上風力発電設備は波や風の影響を受けて揺れる点が課題だ。福島沖の実証研究プロジェクトでは3つの発電設備ごとに浮体部分の構造を変えて、揺れによる発電量や安全性を評価することになっている(図11)。このプロジェクトの成果をもとに、日本の近海に洋上風力発電が広がっていく期待は大きい。
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