原子とロールで作る「ペロブスカイト太陽電池」太陽光(2/4 ページ)

» 2016年05月26日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

6インチ角に到達

 現在、市場の9割を占めている結晶シリコン太陽電池は5〜6インチ(12.7〜15.2cm)角のセルを組み合わせて、モジュールを作り上げている。設置上の取り扱いや発電システムを構築することを考えるなら、同程度の寸法で変換効率が高いペロブスカイト太陽電池が必要だ。

 Sollianceが開発したペロブスカイト太陽電池モジュールは、6インチ角のガラス基板上に形成されており、開口部面積(光が入射する面積)は168cm2。Sollianceでペロブスカイト太陽電池のプログラムマネジャーを務めるRonn Andriessen氏は発表資料の中で、開発品の開口部面積が市販の標準的なシリコン太陽電池セルと同じだと捉えている。

どうやってモジュールを作ったのか

 太陽電池セルが出力する電圧は、採用する半導体の種類などによって異なるものの、1ボルト(V)以下のものが多い。これでは電圧があまりにも低く、用途が限られてしまう。そこで、複数のセルを直列に接続してモジュール化し、出力電圧を高めている*6)

 結晶シリコン太陽電池では個別に製造したセルを物理的に結線してモジュールに組み上げる。薄膜太陽電池は異なる。例えばガラス基板上に材料をベタ塗りし、その後、レーザーや超硬金属などの針で「けがいて」、セルに切り分けていく(パターニング)。

 今回開発したペロブスカイト太陽電池モジュールでは25枚のセルを形成した。パターニングでは針ではなく、量産性が高いレーザーを用いた。

 パターニング(P)を施す一般的な手法を図2に示す。図2はCIGS太陽電池の場合だ。P1で電極をセル単位に分割、P2で隣り合ったセル間の電流の導通路を形成、P3で電極以外をセル単位に分離している。このように3回に分けてセルを形成し、セルを相互接続する手法が一般的だ。今回のペロブスカイト薄膜太陽電池モジュールでもP1、P2、P3というパターニングを施した。Sollianceは試作に採用したのは、「古典的な」パターニング手法だと説明している。

*6) 多結晶シリコン太陽電池の場合、例えば電圧0.6Vのセルを60枚直列に接続して出力電圧36Vのモジュールを形成している。

図2 CIGS太陽電池セルとパターニングの関係 出典:Sollianceでディレクターを務めるHuib van den Heuvel氏が2015年6月23日に公開した資料「Value creation by industry with 'Solliance inside'」

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