太陽電池モジュール出荷がついに減少、パネルメーカーの生存競争が激化太陽光(1/3 ページ)

太陽電池モジュールの出荷がついに2015年度は減少に転じた。苦境に立つ太陽電池メーカーはこれらの状況に対し、どのような戦略を取るのか。太陽電池メーカー各社の2015年度の動向と2016年度の取り組みについてまとめた。

» 2016年05月31日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 太陽光発電協会によると日本の2015年度(2016年3月期)の太陽電池モジュールの総出荷量は7956MW(7.956GW)で前年度比19%減と大きく減少した。2014年度まで順調に拡大してきたソーラー市場は一転、縮小の新たな段階に入った(図1)。

photo 図1 日本におけるモジュールの総出荷量(クリックで拡大)出典:太陽光発電協会

 さらに日本企業だけの出荷量は5179MWで同24%減と全体の数字よりも減少率は大きい。日系メーカーはこうした厳しい環境下で、難局を切り抜けるための施策を打ち出している。国内市場に対し、住宅用では太陽光発電システムに蓄電池システムなどを組み合わせたセット販売に力を注ぐ構えだ。一方、産業用では利益が取れる案件に絞るという戦略を進める方針。その他、国内に比べて市場の伸びが期待される北米やアジアなどを中心に海外展開を積極的に進める動きが活発化している。各社の取り組みを紹介する。

海外展開に活路を見いだす京セラ

 京セラは2016年度のソーラー事業は、海外展開をカギだとしている。同社の2015年度の太陽電池の販売数量は1.2GWで前年並みとなった。セグメント別でソーラーエネルギー事業を含むファインセラミック応用品関連事業の売上高は2475億1600万円、前年比10.8%減で推移した。この減少分はほぼソーラーエネルギー事業のマイナスによるもので、単価ダウンの傾向が影響した。一方、2016年度は1.3GWを見込んでいる。特に2015年度20%だった海外比率を、今期は22〜23%へと引き上げる計画だ。

 取り組み策としては2015年度、前年比2倍に伸ばした米国市場をさらに強化する。米国市場は再生可能エネルギーの投資税控除の5年延長も決定し、市場は引き続き拡大基調にある。京セラでは住宅向け施工販売の大手業者と本格的な取引を開始し、今期も前年比30%増を目指す。アジアではタイ市場で大きな伸びを見込んでいる。同国の発電大手のSPCG社との連携強化を図るとともに、法人税控除などの補助政策を活用した案件の提案などにより、タイでの今期売り上げは同3倍成長を目標に掲げている。

 国内については、住宅用ソーラー市場を「太陽電池の発電コストの低減や、固定買取り価格の下落に加え、ゼロエネルギーハウスの普及などを背景に、売電型から自家消費型に移行する」と予想。その中で、同社は太陽電池と蓄電システム、HEMSを組み合わせた取り組みを進める方針だ。

 太陽電池では屋根への搭載を最大30%アップさせた高出力・高容量の新製品「Rooflex」を4月に発売した。また蓄電システムはマルチDCタイプのラインアップの拡大目指し新製品の発売を計画しており、HEMSについてもソーラーや蓄電システムなど周辺機器と連携を強化した新製品の投入を予定している(図2)。

photo 図2 京セラが住宅用ブランドとして展開を開始した「RoofleX」ブランド

 メガソーラー事業は着工前案件の確実な取り込みと水上や営農など新たな分野への展開を進める。さらに、発電事業の長期運用に対してO&M(オペレーション&メンテナンス)サービスの重要性が増していることから、この分野への取り組みを強化し契約件数の倍増(前年比)を目指す。山口悟郎社長は「パネルの価格が引き続き下落している中で、メンテナンス分野や蓄電池システムとセット販売などに積極的に取り組み、他社との差別化を図る。特に利益が取れる案件を中心に強化していく」としている。なお同社のソーラー事業の国内販売での構成比は住宅用が4割、産業用が6割となっている。

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