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» 2016年06月06日 13時00分 公開

蓄電・発電機器:二酸化炭素を出さない石炭火力、実現は間に合うか (2/2)

[畑陽一郎,スマートジャパン]
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技術開発の中間段階に入った

 経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、段階を踏んで石炭火力発電関連の技術開発を進めてきた。2016年度からNEDOが一括して事業を進める形に変わり、2021年までに必要な技術を開発する。このような取り組み全体を「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」と呼ぶ。2012年度から2021年度までの10年間を、次の3つの段階に分けて進める事業だ。

  1. 酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC:Integrated Gasification Combined Cycle)
  2. IGCCに二酸化炭素分離回収設備を組み合わせたもの
  3. さらに燃料電池(FC)を追加したもの(IGFC)

 (1)と(2)の段階は、中国電力大崎発電所の構内で進む「大崎クールジェンプロジェクト」の実証事業*4)として、2009年に計画が発表されていた。その後、(3)の段階が同プロジェクトに追加された形だ(図2)。

*4) 広島県大崎上島町に位置する中央電力大崎発電所(石炭火力)を休止し、構内で実証試験を進める。

図2 石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業のスケジュール 出典:中国電力

高圧化と燃料電池の研究進める

 NEDOは2016年6月1日、石炭ガス化燃料電池複合発電に活用する3つの調査・要素技術開発「次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発」を開始したと発表した。事業総額は51億円規模。先ほど紹介した発電方式を実現するための取り組みの1つだ。

 今回の調査・要素技術開発は、第3段階の詳細設計・製作・建設の検討に活用するためという位置付けだ。技術要素ごとに開発を進め、大崎クールジェンプロジェクトの実証試験に役立てる。

 三菱日立パワーシステムズと日本特殊陶業に委託を予定する事業は、「ガスタービン燃料電池複合発電技術開発」。図3のような中小型ガスタービン燃料電池複合発電の技術開発を進める。

 「2018年度末までの3年間の研究開発のうち、おもに出力1000kW級の小型のガスタービン燃料電池複合発電設備の技術開発を進める。中小型は圧力を上げるほど発電効率が高くなるため、高圧化に必要な要素技術を開発する」(NEDO環境部)*5)。「燃料ガスとしてメタンを主成分とする天然ガスで技術を確立し、その成果を石炭ガス化ガスに持って行く形だ」(NEDO環境部)。

*5) 小型の開発では蒸気タービンを用いない。中小型では10万kW級までを視野に入れる。

図3 中小型ガスタービン燃料電池複合発電システムの概要 出典:NEDO

 電源開発に委託を予定する「燃料電池モジュールの石炭ガス適用性研究」は、図4に挙げた石炭ガス化燃料電池複合発電システムのうち、赤い点線で示した燃料電池モジュールの石炭ガス適用性研究を進める*6)。事業期間は2019年度末までの4年間。

 図4中の水素リッチガスとは石炭ガス化ガスを意味する。石炭ガス化ガスを燃料電池に供給して運用した実績がないため、運用性や性能を調べ、課題を抽出する。石炭ガス化ガスによって燃料電池の内部構造にどのような影響が及んだかを調べるため、最終的に燃料電池を分解し、解体研究も行う。

*6) 図4の黒点線枠で囲った「燃料電池用ガスクリーンナップ技術」の開発に着手したことをNEDOが、2015年9月に発表している(関連記事)。

図4 石炭ガス化燃料電池複合発電システムの全体像 出典:NEDO

 この他、電源開発と中国電力に委託を予定する「燃料電池石炭ガス適用性研究」(2017年度末までの2年間)もある。IGFCの技術開発動向と同実証システムを調査する。大崎クールジェンプロジェクトの第三段階で実証試験する設備の発電容量を決定し、試設計を行うとした。

 2021年に始まるIGFCの実証試験まで、道のりは長い。

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