石油価格下落でも「過去最高」の伸び、再生エネが強い世界の再生可能エネルギー2016(1)(2/4 ページ)

» 2016年06月08日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

グラフで見る再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーが最終エネルギー消費に占める割合は、全世界で19.2%に到達した(図2)。GSR2016が示した全体像である。

 ここでいう再生可能エネルギーとは、以下の囲み記事で解説したように、熱を得るためにだけに用いたものを含む。例えば、図2中央で「Traditional biomass(伝統的なバイオマス)」と表示されている部分は、発展途上国で調理や暖房のために用いる動植物由来の資源を指す。「Modern renewables」とある部分が、先進国などで多用されている水力や風力、太陽光などを指す。

 化石燃料(Fossil fuels)が占める割合は、78.3%とまだまだ高い。改善は進んでいるのだろうか。

 5年前に発行されたGSR2011では、化石燃料の割合が81%、原子力が2.8%、再生可能エネルギーが16%とある。5年前と比較すると、再生可能エネルギーの普及が3.2ポイント広がっている。好ましい状況だ。

図2 全世界の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合(2014年推計値) 出典:REN21

 電力の状況も改善が進んでいる。全世界の発電所の発電容量に占める再生可能エネルギーの割合は23.7%(図3)。GSR2011(19.4%)と比較すると、4.3ポイント高まった。

図3 全世界の総発電量容量に占める再生可能エネルギーの割合(2015年末推計値) 出典:REN21

一次エネルギーと最終エネルギーの関係

 エネルギーや発電の状況を見る場合、最初におさえておかなければならないのが、どこからエネルギーを調達し、どのように変換して、どのように使うかというフローの全体像だ。

 例えば、ガソリンは石油から精製し、輸送用燃料に用いる。電力とはほぼ無関係だ。逆に原子力は電力のみを生み出す。枯れ枝や家畜のフンを集めて燃やし、熱のみを得る使い方もある。

 自然界から採取したエネルギー源を一次エネルギーと呼ぶ。石炭やウラン、枯れ枝などだ。利用時のエネルギーを二次エネルギー(または最終エネルギー)と呼ぶ。電力であったり、ガソリンや熱の形を採る。

 国や地域単位でエネルギーの流れを調べる際には、どの部門が利用しているのかも重要だ。輸送、産業、企業、家庭などの部門がある。

 図A-1は、欧州連合(EU)におけるエネルギーフローを示したもの。左端で調達し、中央付近で変換し、各部門が右端で消費している。中央左上は発電所とコージェネレーション(CHP)を示す。さまざまな一次エネルギーがここで電力に変換されている。

 再生可能エネルギーを黄緑色で示した。2012年時点では、まだまだ細い流れだったことが分かる。

図A-1 欧州連合における一次エネルギー・発電・最終エネルギー・利用部門の関係(2012年) 天然ガス(青)、原子力(紫)、石炭(赤)、石油(黒)の他、電力をピンク色で示した。ごく薄い灰色は発電所などにおける巨大な変換ロスを示す。石油のうち下側の太線は輸入原油を加工して、直接利用(原料)や輸出する流れを示す。出典:欧州経済領域(EEA)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.